6月のお知らせ <ペット保険Q&A>

遅くなりましたが6月のお知らせです。暑くなっていますので熱中症にも気を付ける時期です。体調が保ちにくい時期ですので動物だけでなく私たちも気を付けて夏を乗り切りましょう!

今月は「ペット保険」についてもまとめています。常に多いペット保険の質問。院長独自の視点から解説しています。興味があればぜひご覧ください。

 

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「ペット保険」まとめとQ&A

ペット保険に関連する質問は常に多くいただきます。

「ペット保険」については過去にいくつか記事を書いています。そこでは、そもそも「保険」とは何か?「保険」はどんな時にかけるものか?という、ペット保険のみならず、「保険そのもの」に対する根本的なお話し、および院長の保険に対するスタンスをお話しさせていただきまいた。

1月のお知らせ  <ペット保険について>

「ペット保険」のお話。

 

私個人(院長)の主観的なハナシですが、基本的にペット保険は不要派です。

 

多くの方とお話をしてみて思うのは、みなさん「どのペット保険がいいか?」「保険が使えるか?」ということに多くの関心があるようです。

 

しかし、そもそも「保険とは何か?」ということを理解している人はとても少ないように感じます。

 

「そんな当たり前のこと知ってるよ!」「何を偉そうにw」と思う方が多いかもしれませんが、本当に正しく説明ができますか?意外と戸惑う人も多いんじゃないかと思います。

 

「保険とは何か?」を理解するためには、上にリンクを貼った過去記事も参考になりますので是非ご一読ください。そして「そもそも保険が必要なのか?」と言う視点も持てるといいんじゃないかなと思います。

 

当院院長は獣医師ですが経営者でもあるため、金融や経済の勉強もそれなりにしています。FP3級は取得しビジネス会計や簿記の知識もあるので、一般的な方よりは少しこういう分野(金融関連)には詳しいです。といっても、まあ少し詳しい程度でもちろん専門家ではありません。最終的な保険加入は自己判断でお願いします。獣医師や動物病院は特定の保険を勧めたり紹介できる立場にはありません。

 


 

さて、ここからはペット保険関連で多い質問についてお答えしていきましょう!長い解説のモノもありますが、本質をつかんでほしいと思い頑張って書きました(笑)

 

 

ペット保険に入るかどうか迷ってます・・・
当院の院長はペット保険不要派です。まず「保険」とはなにか?について理解を深めるとよいと思います。そして保険に入ろうと思う「目的」は何か?をもう一度考えてみてください。
入ろうか迷っている場合は、くどい様ですが「保険とは何か?」ということをまず理解することを強くお勧めします。そして、保険に入ろうとしている目的は何かを明確にしてください。保険とは何か?ついては過去記事やこの後の質問への回答でも参考になる考え方が出てきます。
※過去記事
保険に入るかどうかを検討する際に、最も危険なのは「保険に入ってトクをしたい」という思考です。ペット保険に限らず、すべての保険において「トク」を求めてはいけません。「いやいやそんなことねーよ」と思う方も、根柢にはこの思考の方が多い気がします(トクを求めてはいけないというのは後の質問に対する回答でも出てきますがとても重要な視点です)。

 

「保険に入って医療費の負担を軽くしたい」というのが目的の場合、それは本当に保険で対応しなくてはいけないことなのか?考える必要があります。

 

「保険に入って気軽に病院に行きたい、そのほうが心理的に落ち着くんだ」というのが目的の場合。保険が心の安定につながるのであれば、それが目的ですからアリかもしれません。

 

ただ、保険商品と言うのは本来「心の安定剤」「お守り」ではなく「金銭的な補償」を目的とした金融商品です。冷たく感じるかもしれませんが「ただお金が出るだけ」そういう商品です。ですから保険をかけていないと金銭面で大きな問題が生じるかどうか?が検討の際に最も考えるべきこととなります。お守りは神社で買いましょう。

 

保険を正しく理解して、目的を考えたときに「本当に保険加入一択なのか?」その答えが出ると思います。

 

 

知り合いのペットは保険に入ってトクをしていた。やはりおトクなのでは?
保険商品は性質上、必ず誰かはトクをする人が出てきます。がその誰かはごく一部で、保険加入のすべての人がトクをすることはあり得ません。保険の本質は「相互扶助」の精神、つまりたくさんの人で不幸な少数の人を助けるということ。トクをするかどうかで検討するものではなのです。
しつこいですが、保険は「トク」を求めて加入するものではありません。保険に入って「トク」をするということは、加入者の一部で必ず起こります。宝くじを買えば誰かは当たるのと同じです。が、ほとんどの人は保険料に見合う保険金は得られません。

 

これは「保険」と言うものが「そういうシステム」だから絶対のことです。保険会社は営利企業ですから儲けなければなりません。儲からない保険商品は販売しません。保険会社が儲かるということは加入者全体では損をしているということになります。

 

保険は「相互扶助」の金融商品ですから、なにも保険会社が悪いわけではなく、保険とは「そういうもの」なのです。

 

過去ブログでも述べましたが、めったにはないけど大きな金銭的被害が発生しうるもの、つまり自動車の対人対物保険、家屋の火災保険、一家の大黒柱に対する死亡保険などは「相互扶助」で助け合う事象と言えます。保険商品の中でも特に重要な位置づけと言えます。

 

一方「ペット保険」がこれ(相互扶助で助け合うもの)に入るの?ということはよく考えなくてはなりません。動物の病気と言うのは遭遇率の高い出来事です。保険の本質は助け合うこと。多くの人で少数の人を助けるから成り立つのであて、多くの人で多くの人を助けるという図式は成り立たないのです。

 

P.S. 保険会社は本当に相当儲かってますので、過去には金融庁から「儲けすぎ」と注意されてもいます。実際、大手保険会社の業績を見れば売上は右肩上がりで凄まじい利益が出ており、配当金などで大きな金額を株主に還元しています。それでいて豪華なパンフレットをつくり、TVCMでは有名芸能人を使い、東京のど真ん中一等地に本社ビルを構えています。どれだけの利益が出てるのかわかりますよね?トクを求める方は、保険に入るより、保険会社の株を買ったほうがいいかもしれません(笑)

 

 

どのペット保険に入ればいいですか?
獣医師や動物病院は特定の保険をお勧めできません。どのペット保険かで迷っている場合は「どのような補償を受けたいか」をよく整理して検討してください。
まず前提ですが、獣医師や動物病院は特定の保険を推奨やあっせんなどはできません。犯罪となってしまいます。病院にパンフレットなどを置いていますが、特におススメしてるというわけではなく、置き場所を貸しているだけです。
さて、そのうえで「どのペット保険」ということについて一般論をお伝えします。

 

すごく当たり前ですが、保険を検討するうえで最も重要なのは「補償内容」です。「そんな当たり前のこと!?」と思われるかもしれませんが、ご家族とお話ししてみるとご自身の加入している「ペット保険」の補償内容を理解していない方がとても多いです。

 

補償内容をよく検討して加入したならばそんなことにはならないと思うので、保険を検討するときに肝心の補償内容が二の次になっていないか?と心配になります(ちなみに「補償内容」とは「いくら返ってくるか?」というお金の話だけでなく、どのようなときに保険適応となるのか?ということですので誤解の無いよう)。

 

補償内容を理解していないよくあるパターンとしては
  • 窓口精算が可能かどうかを第一に保険を選んでいる(補償内容で選んでいない)
  • とにかく安い保険を選んでいる(補償内容で選んでいない)
  • ペットショップで抱き合わせですでに加入していた(補償内容を知らない)

 

などがあるようです。人間の国民皆保険制度のように、病院窓口で保険処理がされる(一般の方は3割負担)ことを真似事とした、「窓口精算対応のペット保険」と言うモノがあります。しかし、あたりまえですが窓口精算対応かどうかは、補償内容とは関係ない話です。なので、間違っても窓口精算対応かどうかを第一にして選ばないようにしてください。

 

また、とにかく安くと言う場合は、ご自身の希望する補償が得られないかもしれません。受けたい補償が受けられなければ何をやってるんだかわかりませんよね?

 

ペットショップですでに入っている場合も多く、この場合もは解約できるのかも含めて、補償内容はどんなものか?一度確認をしてください。

 

とにかく「どのような補償を希望するのか」当たり前なのですが、コレをよく考えてみてください。

 

 

保険の窓口精算はできますか?
当院では、アニコム損保だけ窓口精算対応としています。が、前問の解答にもあるように「窓口精算対応かどうか」で保険を選ばないようにしてください。窓口精算というシステムは非常に不自然で、多くの患者さんが誤解をしています。

窓口精算対応可能のペット保険と言うモノがあります。いくつか商品がありますが、代表は「アニコム損保」「アイペット」あたりかと思います。

 

「窓口精算対応」というのは人間の国民皆保険制度をマネたものですが、そもそもそのシステムは全く異なるものですし、ただ単に「こういう商品は売れるよね」という保険会社の販売戦略上のシステムです。この窓口精算と言うシステムは非常に不自然な制度で多くの患者さん(消費者)に誤解を生んでいます。動物病院側には一ミリも特が無いので正直やりたくないのですが(笑)、当院は諸事情により「アニコム損保」だけは窓口精算対応としています。

 

さて、ここではこの窓口精算対応についての不自然さと、ご家族が抱きやすい誤解についてお話しをしておきます。

 

何が不自然で誤解になるかと言うと、本来は保険会社がすべき「保険適応の判定」という重要な業務について、あたかも動物病院がやるべきことのように、ひいては一般の患者さんからすると動物病院がやるのが当たり前かのように映ってしまう、これが非常に不自然かつ大きな誤解となっているということです。

 

ここで、窓口精算のシステムを簡単に解説しておきます。動物病院側が保険適応と仮判定した診療内容については、その時のお会計で保険金を差し引いた自己負担分だけをご家族に請求するやり方です。1万円の医療費で3割負担なら、3千円だけ病院にお支払いいただきます。残りの7千円はしばらくして、保険会社から動物病院に振り込まれます。

 

さて、大きな誤解になるのは「動物病院が保険適応と仮判定した」と言うところです。動物病院はあくまで「代理」で「仮の判定」をしているだけなのですが、一般の方からすると「動物病院が保険適応判定の最終決定者に映ってしまっている」ということです。動物病院は保険適応における最終的な決定者ではありません。

 

保険適応判定は当然ですが、本来は保険会社がするべきこととなります。この窓口精算も同じで保険会社がすべきことなのですが、その作業を動物病院が請け負います。ただ、しつこいですが「あくまで一時的な仮の保険適応判定」をしているだけです。

 

ですから、いったん動物病院で窓口精算の処理をしても、それは保険使用が確定したわけではありません。後日、保険調査が入り保険会社が「NG」と判断した場合には、保険会社からご家族に保険金返還の請求もありえますし、実際にそのようになったことも経験しています(この時に、動物病院がクレームを受けることがありますが、本来関係のない立場なので保険会社とお話をしてもらうことになります)。

 

ちなみに、この動物病院がやる代理の作業はかなり煩雑にもかかわらず、手数料はほぼありません(笑)。本来、保険会社がやるべききわめて重要な仕事を仮とはいえ肩代わりしてるのに無償に近い形でやっています。なので、前述しましたが動物病院側には一ミリも特が無いのです。

 

 

そちらの病院では保険が使えますか?
保険が使えるかどうかは、動物病院が判断することではありません。まずはご自身の保険の補償内容をよくご確認ください。

よくいただく質問の一つです。

まず「保険が使えますか?」と言う質問が、イコール「窓口精算ができますか?」という意味の場合は一つ前の質問でお答えしたように、アニコム損保だけが窓口精算対応です。

 

それ以外の「保険が使えるかどうか?」ということについてですが、これは保険契約に基づき保険会社が判断することです。保険契約は「ご家族」と「保険会社」の二者間の契約ですから、動物病院はその内容を知る立場にありません。ですから、そもそも保険が使えるか使えないかの判定をする立場にありません。

 

診療後、ご家族には診療明細書と領収書をお渡ししますので、それを基に保険会社に保険金の請求をしていただきます。

 

保険会社はその診療明細などを調査し、診療のどの部分が保険適応なのかを判断します。そして、保険契約に基づいた割合でご家族に保険金が支払われることになります。

 

動物病院業界には「窓口精算」という不自然な方法があるため、なんだか困惑してしまう方が多いようですが、本来はこのような流れで保険金の請求をするのが普通、自然といえます。

 

 

今日診察した病気、これからペット保険に入って使えますかね?
何度も同じ話で申し訳ありませんが、保険が使えるかは保険会社が判断します。一般論として、すでに罹っている病気については保険の免責事項となることが多いようです。つまり保険の対象外となる可能性があります。
診察をした時に「○○病です」という流れになったとします。その時に「今からペット保険に入ろうかしら?」とか「ペット保険に入ってから治療しますね」など、そのような話をされる方がいます。

 

保険に入る・入らないは個人の選択の自由なので特にこちらから申し上げることはありません。が、一般論としてこういう考え方はやや「危険な思考」といえます。なぜ危険というと「保険でトクをしよう」と思っているフシがあるからです。くどいですが保険でトクをしようと思ってはいけません。

 

保険契約をする際、ほとんどの場合「告知義務」と言うモノがあります。「過去に□□病気になった」とか「今、△△病気と診断されている」などは保険加入に際し、正しく保険会社に申告する義務があるのです。これを怠って保険契約を結んだ場合は保険金が支払われないだけでなく、悪質な場合は詐欺罪として訴えられることもあります。

 

動物病院は「何年何月何日に、こういう訴えで来院し、こういう診察をした」ということを必ずカルテに記載します。保険会社から依頼があった場合、この内容は開示することがありますので、動物病院側で手心を加えたり嘘をついたりは当然できませんのでご了承ください。

 


まとめ
保険についていろいろ語ってきました。

 

  • 保険とはそもそも何か?
  • ペット保険は必要なのか?
  • 入るとしたらどういう保険を選ぶのか?
  • 窓口精算とは?
  • 保険が使えるかどうか?

 

など多くの疑問にお答えしてきました。

 

ただ、過去記事や冒頭で述べたように、院長はペット保険は不要派です。

 

ペット保険は、保険の本質である「相互扶助」の概念からは外れた商品です。保険会社は営利企業ですから、売れる商品、儲かる商品であればどんどん売ります。それが消費者にとって本当にいいか悪いかは別問題です。本来の保険の趣旨から外れようと「売れれば正義」なんですね。モチロン保険会社に言わせれば「いいモノだから売ってるんだ」と反論されると思いますが(保険の営業マンは自ら「イマイチな商品なんですよね」とは言いません)。

 

ペットが病気になること、医療費がかかることはよくある事象です。よくあることに対しての備えは保険ではなく貯蓄などで備えるのが王道です。保険会社に保険料を支払うのではなく、それはペットのための貯蓄に回す。これも立派な「備え」なんです。保険という手法だけが備えではありません。

 

よくあることにまで保険で備えようとするのは日本人の特徴だと言われていて、ありとあらゆるものに保険商品が生まれ、そしてそれがバンバン売れています。例えばスマートフォンの保険に入っている方、そういう方は「なんでも保険で備えよう」そんな傾向があるかもしれません。

 

保険貧乏と言うコトバもあるぐらい、たくさんの保険をかけすぎてむしろ生活が苦しくなっている人もいるみたいですね💦

 

さて「そのペット保険、本当に必要でしょうか?」その視点も持つといいんじゃないかと個人的には思います。まあ「あくまで」個人的な意見ですが(笑)

 

それでは。