5月のお知らせ <身体検査についてお話しします>

遅くなりました。5月のお知らせです。ゴールデンウイークも終わり過ごしやすい時期からやや暑い時期に移りかけています。こういう時期はヒトも動物も体調に気を付けてください。急な暑さからの熱中症や、寒暖差からの体調不良も少なくありません。何かあればお気軽にご相談を。

なお、フィラリア予防は5月末ごろからです。検査が未だの方はお早めに!

 

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身体検査についてお話しします

4月、5月と予防関連での来院が増えるため、たくさんの犬猫の「身体検査」を実施しました。

一年ぶりにお会いするワンコ&ニャンコも多いため「身体検査」で色々な変化を感じ取ったり、場合によっては病気の兆候を見つけたり、そんなことがたくさんあります。

 

さて、今回は一見地味ですが「身体検査」についてお話ししたいと思います。

実は「身体検査」はどのような理由で来院したのか?や、動物の性格や性質など、つまり「時と場合と症例」によりその内容には温度差があります(院長はそのように考えています)。

 

動物の場合は、通り一辺倒の、教科書通りの身体検査は実は向かないこと多く、現場ではいろんな動物と相対しますので、杓子定規なやり方では上手くいきません。

 

経験や勘、動物の雰囲気を感じ取りながら「効率的な身体検査」が必要となります。

 

「身体検査くらいで仰々しいな」と思われるかもしれませんが、その辺の考え方をちょっとお話ししてみたいと思います。地味な内容かもしれませんが、身体検査は一般の方にもできることもありますので興味があればぜひご覧ください。

 

身体検査とは?

まず「身体検査」とは?ですが主に五感を用いて身体の情報を手に入れる作業を「身体検査」と呼びます。

 

視る、聴く、触る、嗅ぐなどの「感覚」を用いて身体の状態を判断するということですね。

 

さて、「検査」というのは基準から離れている、異なっているモノを見つけ出す作業ですから、正常の状態を知っておく必要が有ります。何が言いたいかと言うと「異常だけを見てもわからない」ということです。正常の状況を知っているから異常を判断できるわけですね。ですから、ご家族の皆様も愛犬愛猫の「普段の状況」をよく知っておくと、とても良いですね。まあ当たり前のことですので、できてる方も多いと思います。「健康でフツーだな」と思えるときこそ、しっかりとカラダのコンデションを把握しておきましょう。

 

さて、ここからは身体検査の各論をお話しします。

 

カラダの基本的なサイン(バイタルサインなど)について

まずは最も基本的なカラダのサインについてカンタンに触れます。

医療用語では「バイタルサイン」と言うコトバがあります。いい日本語訳ではないですが「生命兆候」と言い、生きるのに必要な最低条件を確認する作業です。体温・呼吸状態・脈拍・血圧などを含みますが、「体重」および「意識レベル」も重要なサインのため、ココではこれらを基本的なサインとしてそれぞれについて解説します。

 

体温

体温はカラダの状況を把握するのに重要なデータの一つです。主に問題になるのは発熱ですが「カラダが発熱する」というのはよっぽどのことです。基礎病のない健康な成人の場合、熱が出るのは一年に一度あるかないか?ぐらいではないでしょうか?(院長もそれぐらいです)。発熱状態の時はカラダには必ず何か異常が起きています。ですので、当然ですが熱があるかないかは評価するべき項目です。

 

しかし、当院は体温測定は常には行いません。というか体温測定は割愛することの方が多いです。

理由はいくつかあります。

 

  • 体温測定は動物がとても嫌がる

体温測定は直腸温で行うため動物はとても嫌がります。診察開始からいきなり「お尻にズブッ」なので変なトラウマを植え付けかねません。診察では身体検査の後に「色々とやらなくてはならない重要なこと」が多々ありますが、しょっぱなから動物が嫌な思いをすると、その後の各作業がとてもやりにくくなってしまいます。また、嫌がる動物に無理やり体温測定しても、興奮させた結果として高体温になってしまうこともあるので、あまり得することがない作業と考えています。

 

  • 高体温は触診や動物の様子でだいたい把握できる

体温の高い動物は、そもそも見た目の様子がメチャクチャ悪そうに見えます。上述したように発熱時は必ず何かありますからね。また体を触ると「火照り(ほてり)」を感じ「あ、体温が高そうだな」というのが測定しなくてもわかります。この時は確認のために体温測定をしますが、要は体温の高い動物と言うのは、経験や直感から測定前にだいたいわかるものです。

 

なお、低体温の時も明らかな異常で緊急度の高い状況です。これも測定しなくてもわかりますので、まずその他の検査や処置を急ぎます(もちろん測定しますが)。

 

まとめると、体温は重要ですが、病院を訪れる全ての動物に対し「ルーチンに教科書通りに測定するメリットは少ない」と考えています。

 

当院を来院されたご家族の中には「ココの病院病院は体温を測らないんだな」と思った方もいるかもしれませんが、決してさぼっているわけではなく(笑)、診察を円滑に進めるために最適な方法を考えているのですね。

 

呼吸状態

呼吸が止まればそれは死を意味しますので、呼吸回数や呼吸状態はもちろん重要です。

ただ、呼吸回数については動物では興奮状態のことも多く、厳密な測定にはそれほど意味がありません。安静時であれば呼吸回数が多いかどうか?は比較的役に立つ指標です。病院内でも「落ち着いているのに呼吸回数だけ多い」という時は呼吸器疾患を疑うことになります。

呼吸状態については、大きくカラダを使って肩で息をするような呼吸の仕方(努力呼吸)や猫の開口呼吸には注意が必要で、これらも何らかの呼吸器疾患を疑うことがあります。

 

脈拍と血圧

脈拍が落ちていたり、血圧が下がっている場合はだいたい緊急性が高いので、その評価は確かに重要ではありますが、そういう動物はグッタリしているので数字を厳密に測るというよりは、そもそも緊急対応が優先となります。病院に来て、興奮や緊張状態である動物の脈拍や血圧はだいたい高くなっており、正確な評価は困難です。こういう場合は一生懸命測ってもそのメリットは少ないです。

 

体重

体重は重要なサインの一つです。特に下降トレンドの場合は注意が必要。地味だけど測定のたびに少しづつ減少している場合は何らかの基礎病が理由かもしれません。場合によっては精密検査の対象です。参考までに体重が徐々に減っていた、病院看板猫の「なこ」の闘病記録をご覧ください。「がん」を発見するきっかけの一つが体重減少でした。

2月のお知らせ <ナコ 闘病記録 最終回>

 

ただ、どちらかと言うと現場では「いつ測定しても体重が増えてしまう」上昇トレンドの動物が多数です。この場合は、食事(おやつも含めて)のやり方に明らかな問題があります。肥満からの生活習慣病が急増中の現代。定期的に体重を測定しておくことが重要です。体重や生活習慣病についてはコチラの記事も。

6月のお知らせ <体重管理をしよう>

8月のお知らせ <急増!生活習慣病>

 

意識レベル

意識状態はそのレベルにより、意識不明、昏睡、混濁、沈鬱などに分けその状態を評価します(※ヒトの方ではもっと正確に分類するようです)。意識レベルを見るには動物の全体の様子と「眼」を見るのが手っ取り早いです。目線や瞳孔のサイズ、モノに対する眼の動きや反応などが、意識の評価の一つとなります。

 

 

五感を用いた身体検査

さて、続いて五感を用いた身体検査をお話しします。前述の基本的なサイン(バイタルサイン)の内容と被る部分がありますが、ここでは主に「獣医師の眼、手、耳をどう使うか?」という視点から身体検査を解説してみましょう。

 

視診

読んで字の如く「見て判断する」これを視診と呼びます。

人間は「眼」で色々な事象を判断しているため「眼で見られる」というのは、カラダの情報を手に入れるのにとても有利です。逆に言えば眼で見えない場所(内臓)は情報が乏しいです(画像検査などで評価しますね)。内臓の病気を疑う時は「お腹を開けて眼で実際に視てみたいな」と思うこともしばしばです(なかなか検査のための開腹はできませんが)。

 

さて、話がそれましたが私が視診でよく見るポイントは

  • 粘膜

この二つです。モチロンこれ以外も診ますが重要な部位と言う意味です。

眼は口ほどにものをいう、と言いますが、眼を診るといろんなことがわかります。前述の「意識状態」についても眼は重要なチェックポイントです。またいわゆる「白眼」の部分は充血してたり黄疸が見られたりするので、色合いも評価します。さらに、瞳孔のサイズや眼が揺れていないか(眼振)を評価。身体検査では眼を一瞬パッと見ているだけですが、その一瞬でこれらのことを瞬間的に把握してるのです。

 

次に粘膜ですが、主に口腔粘膜が評価しやすいのでそこを見ることが多いです。粘膜の色合いは重要で、きれいなピンクが通常、薄かったり紫っぽい色の時は要注意となります。また、同時に粘膜を触って乾燥状態(水和状態)、粘膜を少し押して赤さが戻る時間などを評価します。これも口を見てパッと触って一瞬で評価しています。

 

身体検査で口の中を見ると「先生は歯石を見てるのかな?」と思われる飼主さんも多いと思いますが、実際は歯石よりも、身体検査としてはココに記載したようなコトを見てるのですね。モチロン、歯石や歯周病の状態も簡単にはチェックしていますので、必要に応じて歯科治療を推奨することもあります。

 

なお、歯科治療については過去記事をどうぞ。この5月はなんと麻酔治療の8割が歯科治療の予定となっています。予防などで来院された時の身体検査で歯科治療をご提案し、決定したケースが多数でした。

12月のお知らせ <歯周病は「病気」>

 

ちなみにこういった「チェック」はパッと一瞬でやるのが重要です。時間をかけてゆっくりやったほうが丁寧っぽいですが、それは動物のためにはなりません。この作業に時間をかけると動物はだんだんストレスが大きくなり診察が嫌になっていきます。一瞬だからテキトーに感じるかもしれませんが、いい意味で適当にやっているのです。

 

なお、眼や口腔粘膜を見るときに大きく抵抗する動物に関しては無理にやることはありません。無理にやってもプラスになることは少ないです。身体検査の段階でまごついてしまうと、その後の処置、治療、検査に支障が出ることも少なくありません。やはり動物における身体検査は「いい意味で適当にパッとやる」ことが重要です。

 

 

聴診

聴診器を胸に当て「モシモシ」をするアレですね。

聴診では心拍数、心拍のリズム、心雑音を確認しています。心拍数は多すぎるか少なすぎるか、リズムと言うのは不整脈の様子があるかどうか、この辺を確認しています。5~10秒ほどでだいたいの把握が可能です。動物の場合は聴取のポイントが難しいためヒトよりもやや大雑把なポイントで聴診することになります。

さて、この中でも「心雑音」は良く遭遇する病気の兆候の一つです。主に、犬の加齢性の心臓病である「僧帽弁閉鎖不全症」の時に、まずこの心雑音から気づくことは珍しくありません。心雑音が聴取された場合、多くは心臓内での血流に乱れがあることを意味しています。犬では弁膜症のことが多く、まずは精密検査をご提案します。これについては過去ブログ記事で詳しく解説していますので是非ご覧ください。

8月のお知らせ <心臓病と言われたら?>

 

なお、同時に呼吸音も聴取しますが、動物の状況によっては呼吸音の聴取は難しく聴診でわかるレベルの呼吸音の異常であれば、そもそも呼吸状態や具合自体が悪く、一生懸命時間をかけて肺音を聴取するメリットは少ないと考えています(さっさと胸部レントゲン検査に進むなどしたほうが良い)。

 

触診

主に獣医師の「手」を使い体の色々な部位を触らせてもらいます。「手」はすごく優れたセンサーで、触ることでわかる情報はとても多くあります。

私(院長)個人的には次の流れでサッと触診することが多いです。

まずは、主に体表リンパ節を触っていきます。というか、通常は触れない(触りずらい)ので触れたら異常と考えます。私は、首~肩~脇~股にかけて腫れたリンパ節がないかをササっと調べることが多いです。そして、内股に手を当てて股動脈をチェック、脈の状況を感知します。その後、両後肢の筋肉量を触り左右が対称かを見ることが多いです。最後に下腹部を適度に触り異常な構造が無いかを確認。こんな感じで行っています。

ご家族はおそらく、そんなことをやっているとは気づかないと思いますが、実はやってるんです(笑)

 

病気を疑うようなときは、その領域を中心に触診することもモチロンあります。

例えば、泌尿器(オシッコ系)のトラブルで来院された場合は膀胱のサイズを確認するため下腹部を触診したりします。

 

ご家族に「皮膚のココにできものが」と言われた場合は、できものの固さやどこにくっついているかなどを触診で確認します。

 

お腹の調子が悪そうな動物では腹部全体を触診し、痛みが無いか?異常な構造が触れないかなどを評価します。異物による腸閉塞などのケースでは触診で「そうとう怪しいものが触れるな」と言うのがわかったりします。これは経験とかカンによるところもありますが、いつも正常のお腹を触っていると「これはおかしいな」ってのはなんとなくわかるのですね。

 

整形疾患を疑う症例では関節や筋肉を触ったり動かしたりすることはとても重要な評価になります。整形疾患の場合は徒手検査と言って必須に近い作業です。

 

さて、いつまでもずっと触っていたい(笑)のですが、動物の中にはたくさん触られることを好む子ばかりではありません。むしろ嫌がる子の方が多いです。ましてや、痛い部位や調子の悪い部位があれば「そこ」を触りすぎるのはマイナスになることもあります。動物の様子をよく見ながら適度に、これも短時間でパパっと評価する必要があります。たくさん時間をかけてこねくり回せばいいと言うモノではありません。

 

なお、これも他の身体検査と同様、触られることにそもそもスゴイ抵抗をする動物の場合は無理には行いません。それは双方のためにならないからです。無理矢理触診してもわかる情報は少ないですし、スタッフと動物だけでなく、ご家族まで怪我をしたり事故の元になったりすることもあります。

 

まとめ

さて、地味な(?)身体検査についてお話ししました。

 

皆様が思っているよりも身体検査でわかる情報はあるんですね。が、身体検査で病気の「確定」ができるわけではありません。確定するにはさらなる検査を積み重ねたり、短期間では診断がつかないモノもたくさんあります。身体検査で病気を疑った場合は、他の各検査の提案になることが多くなります。

ご参考までに、身体検査などから病気を疑い、対峙した時にどのように進むのか?病院看板猫「なこ」の記録が役立つかもしれません。

2月のお知らせ <ナコ 闘病記録 最終回>

 

さて、身体検査において、私が重要視してるのは「無理矢理にやらない」ということ。

 

教科書的には、体重・体温・心拍・血圧・・・・と診察開始時に「まずこれをやれ」的なことが杓子定規に書かれています。が、ここまで述べたように、動物の性格や状況は様々でそれらをすべて受け入れてくれるコの方が少ないです。無理矢理に身体検査をした結果、動物がパニックになってしまい、その後の必要な検査や治療ができなければ意味はありません。モチロン私たちもプロですから、そうならないように上手に身体検査をするべきなんですが、ここは動物と相対する仕事の難しいところです。

 

私は診療の際、常に「どう進めたら動物にとって良いのか?」「どうすればスムーズに進められるか?」という視点に立っています。ひとりよがりの無理矢理な身体検査にならぬよう、上手く手を抜きながら(笑)動物にかかるストレスを最小限にして、かつ最大の利益になるような診療を意識しているという感じでしょうか。

 

「あいつ手を抜いてるな」と思われた方、実はこういう理由があるのでご理解ください(笑)

 

それでは今回はここまでです。では。

 

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