2月のお知らせ <犬のアトピー ~痒みを抑える戦略~>

いつも大変遅くなってしまい申し訳ございませんm(__)m。2月のお知らせです。早くも暖かくなり、アトピーなどのコでは症状が出る時期になってきました。ヒトでも花粉症の方はかなり症状が出ているようです(私もです・・・)。今月は犬のアトピーのお話があります。興味のある方はご覧になってみてください。

 

 

2月の診療予定

<2月は臨時休診があります>

2月29日(金)の午後に休診をいただきます。午前中は通常診療です。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

また、2月は祝日があります。当院は日祝定休診ですのでお間違えの無いようお願いいたします。

 

 

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犬のアトピー性皮膚炎 ~痒みを抑える戦略~

犬のアトピー性皮膚炎はとても多いトラブルで、当院でも多数の患者さんがアトピー性皮膚炎の治療や対策のために通院をしています。ヒトでも花粉症の方は眼の痒みや鼻炎症状がきつい時期となりました💦(院長も重度の花粉症です。。。)

 

さて、アトピー性皮膚炎については過去にも色々な記事を書いてきましたが、ココではアトピーで最も重要な症状である「痒み」を抑える方法についてお話ししたいと思います。

 

皮膚が痒いというのはワンコにとってもストレスが大きく、あまりに痒みがひどいと犬の性格すら変えてしまいます。

 

また、アトピーの対策には「スキンケア」がとても重要なのですが、痒みの強い状態で頑張ってスキンケアをしてもなかなか思うような結果が出ません(後で詳しく述べます)。

※「スキンケア」については過去ブログやHPもご覧ください。

スキンケア治療レポート~犬の接触性皮膚炎~(過去ブログ)

スキンケアQ&A(過去ブログ)

当院のスキンケアについて(ホームページ)

 

ですので「痒みをコントロールする戦略」が重要となるのです。

ヒトでは痒みをコントロールするときには、外用薬で対応することが多いのですが、動物での外用薬の使用は若干難しい面があります。

 

そのため「投薬」により痒みをコントロールすることが一般的です。

そして、痒みを抑えた状況で、当院推奨の「スキンケア」をコツコツと続けてもらうことが、アトピーと上手に付き合うための近道となります。

 

痒みを抑える投薬としては、古くから「ステロイド」が良く使用されていました。しかし、ステロイドの長期投与は極力避けたいところ。

 

現在では、犬のアトピー性皮膚炎に対するかゆみ止めがいくつも販売されています。そこで今回は犬のアトピーにおける「痒みを抑える戦略」についてカンタンにお話ししたいと思います。

 

 

犬のアトピー性皮膚炎とは?

犬のアトピー性皮膚炎は最も一般的な皮膚病の一つです。

犬のアトピーについて一般の方向けにシンプルに説明します。アトピー体質の犬では、①皮膚のバリア機能が弱い、②アレルギー反応が起きやすいという肌質・体質を持っており若いころから皮膚に痒みが生じる、そんなトラブルととらえてください。

 

今述べたように、アトピー体質の犬では「若いころ」から皮膚に痒みが出ることが特徴です。例えば「10歳から急にアトピー」と言うのは可能性が相当低くなります。痒みの程度は様々で、軽度であれば当院推奨の「スキンケア」だけで対応可能です。時々、食物アレルギーと併発するケースもありますが、痒みの理由が「食物アレルギー単独」と言うのは多くはなく、若いころから皮膚が痒いという場合はまず「アトピー体質」を疑うことになります。

 

わんちゃんでアトピー体質を疑う場合、犬のアトピーを直接的に診断する方法はないため、発症年齢、発症部位、症状、痒み止めへの反応などなど、いくつかの状況証拠がそろったら「犬のアトピー性皮膚炎」と臨床診断して、治療や対策をしていきます。

 

※話は逸れますが、アレルギー検査(血液検査)で確定診断ができると思っている方がたくさんいますが、そのようなことはありません。あくまで除外診断(他の皮膚病が無いことの確認)と今述べたように状況証拠の積み重ねで診断していきます。参考データとして血液アレルギー検査を用いることはありますが、確定診断には使えません。

 

アトピーの基本対策

アトピーのワンちゃんでは「皮膚のバリア機能が弱い」という肌質に対しての直接的なアプローチが重要です。バリア機能の改善には、一言で言うと「保湿」が重要。というか保湿しかありません。

 

つまり、治療の本質は「保湿」ということになります。

 

しかし「ただ保湿剤をぬりぬりすればいいのか?」というと、そういうわけでもありません。頑張って保湿剤を使っていても、使っているそばから犬が掻きむしったり、舐めすぎていたら、良い保湿効果は得られません。保湿を効果的に行うためにどうしたらよいか?以下で2つのポイントをお話しします。

 

  • 皮膚をきれいにしてから保湿

私たちも、汚れた皮膚にいきなり保湿剤を使う人はいませんよね?手洗いや洗顔の後に使うはずです。動物も一緒で、保湿の効果を高めたければ洗浄後に保湿が理想。つまりシャンプー後に保湿です。どうしても手間が取れなければ消毒などで皮膚をきれいにしてから保湿しましょう。ココでのポイントはシャンプー剤や消毒剤の選び方です。そもそも肌の弱いアトピーのコに使うのですから、これらのアイテムが間違ってるとアウトです。当院では安全性の高いシャンプー剤や消毒剤をお渡ししていますので、わからなければ当院推奨のモノをお使いください。

※詳しくは過去ブログを→スキンケアQ&A(過去ブログ)

 

  • 痒みを抑えながら保湿

今回の話のポイントでもありますが、さまざまな投薬で痒みをコントロールしながら保湿をすることで、スキンケアの効果を最大限に高めます。痒みを抑えずスキンケアをするということは、がんばって家を建てているそばから壊してるのと同じです。いい家を建てる(いい皮膚にする)には土地をきれいに(前述の皮膚をきれいにしてからの保湿)して、建てる途中でジャマ(掻き壊し、舐め壊し)が入ってはいけません。

 

 

痒みを抑える方法

さて、ようやくココから本題です。かゆみを抑えるお薬たちを紹介してみましょう。

 

  • アポキル錠

犬のアトピー性皮膚炎に対するかゆみ止めとして現在最も多く使われているお薬です。

ステロイドのような副作用もなく、長期的な投薬もしやすくなっています。

デメリットとしては、申し訳ありませんがややコストが高いこと💦。当院もなるべく利益が出ないような設定にしていますが、それでも負担が小さくない薬だと我々も認識しています。

 

 

  • サイトポイント注射

犬のアトピー性皮膚炎に対するかゆみ止めとして比較的新しいお薬です。

一回の注射で一か月のかゆみ止め効果を期待できます。サイトポイントは「抗体医薬」というカテゴリーのお薬で、ピンポイントに効くため安全性が高いことが特徴です(少し専門的になりますが、痒みを誘発させる一つである、IL-31というモノだけをブロックします)。

 

「一か月効く注射」ということで「なんだか強そう」とか「心配」などという声をいただくことがありますが、今まで使用した経験からは副作用もほとんどなく、かなり安全に使用できる印象です。そもそも「抗体医薬」というカテゴリーのお薬は、安全性が極めて高いお薬の一つとされています。他の薬剤との併用リスクもほとんどないため「持病で他のお薬を常用している」というワンちゃんにも向いています。

 

前述のアポキル錠とは作用機序(お薬がどこに作用してかゆみを抑えるか)が異なります。そのため、アポキル錠の反応がイマイチなケースでも効果が期待できることがあります(ただ、アポキル錠が効くけど、サイトポイントがあまり効かない、と言うケースもあり得ます)。また、アポキル錠との併用で痒みをコントロールすることも可能です。

 

 

  • ステロイド

アトピー性皮膚炎に対するかゆみ止めとしてステロイドを使用することは、今ではかなり少なくなっています。ステロイドは「免疫疾患」というカテゴリーの皮膚トラブルでは非常に効果的で第一選択になることも多いのですが、アトピーでは上記の二つ(アポキル錠、サイトポイント注射)を選択することがほとんどとなっています。

短期的、かつ投与量に注意して使用すれば、それほど副作用の心配もありませんので、腫れが強い時など「しっかりと炎症を抑えたいケース」では一時的にステロイドを使用することもあります。

 

 

  • シクロスポリン

免疫抑制剤の一つで、犬のアトピー性皮膚炎に対するかゆみ止めとして最初に認可されたお薬です。しかし、ちょっと使いづらい面が多く、今ではアポキル錠など他にいいお薬もあるため最近では使用することが少なくなっています。「免疫疾患」というカテゴリーの皮膚トラブルではステロイドとともに使用することがあります。

 

以上4種が使用される主なお薬ですが、現場ではほとんど上の二つ「アポキル錠」か「サイトポイント注射」となります。そこで、この二者の使い分けについてちょっと解説いたします。

 

 

<アポキル錠>

  • かなり早い効果を望む時(即効性)

ステロイドにも即効性がありますが、それと同レベルで速やかに効いてくれます。とりあえずすぐに痒みを抑えたいときに有効です。

 

  • 投与量の調節をしたいとき

アポキル錠は基本は一日二回のお薬ですが、犬によっては一日一回、または一日おき、あるいは時々飲めばOKというコもいますので、投与量を調整したい場合はアポキル錠が適しています。

 

<サイトポイント注射>

  • 飲み薬が大変なケース

飲み薬が苦手なコや、一日二回、きっちり投薬することにストレスを感じる飼主さんの場合はサイトポイント注射を試してみる価値があります。

 

  • 高い安全性

サイトポイント注射は、IL-31のみを標的にする「抗体医薬」で高い安全性が認められています。また、使用制限が少なく、年齢や併用薬などをほとんど考えなくて良いお薬です。持病のため他のお薬を常用しているケースなどではとても使いやすいお薬と言えます。

 

 

まとめ

今回は「犬のアトピー性皮膚炎に対する痒み止め」についてお話ししました。

 

強い痒みはまず止めてあげないと、ワンコのストレスが大きいだけでなく、見ているご家族側のストレスも無視できません。

 

そして、アトピーと上手にお付き合いするには「スキンケア=保湿」が最重要。そのスキンケアを上手く成功させるためにも「痒みを抑える戦略」が必要になります。いくらスキンケア、お手入れを頑張っても、ワンコが舐めまくる&搔きむしるという状況では上手くいかないのです。

 

しっかりと痒みをコントロールした状況で、コツコツと「スキンケア」をしてあげましょう。

 

痒みを抑えるお薬としては「アポキル錠」と「サイトポイント注射が」メインのお薬です。どちらも優秀なお薬で、当院では患者さんに合わせてご提案していますが、もし疑問や質問があれば遠慮なく聞いて下さい。「アポキル錠」も「サイトポイント注射」もやや高価なお薬のためご家族の負担も大きいのは重々承知ですが、まず痒みを止めてあげないとその先に進みずらいのが犬のアトピー性皮膚炎です。

 

「投薬」と「スキンケア」を上手に使ってワンちゃんを痒みのストレスから解放してあげましょう。

 

アトピー性皮膚炎の患者さんでは、そろそろ痒みが出やすい時期がやってきます。「あれっ?」と思ったらいつでもご相談ください。なるべく早めの投薬が大事です!

 

それでは。