10月のお知らせ <犬避妊手術の相談>

10月になりました。9月に引き続き台風が多い時期です。何もないのが一番ですが、ペットのいるご家庭では「ペットのための防災対策」も意識してください。また、緊急事態宣言は終了しましたが、当院では今までと同様の新型コロナ対策を実施中です。皆様のご理解、ご協力に感謝しています。

10月の診療日程

オリンピック関連により、今年の10月11日(月)は平日となりましたね(例年は体育の日で祝日)。そのため、11(月)は通常診療です。

通常通り、日曜日が定休診となります。10月は臨時休診の予定はありません。

 

避妊手術の悩み相談

ここ最近、の避妊手術の相談がとても多かったです。

猫の場合は避妊をしないで飼育することはとても難しいので、生後半年ぐらいでほとんどの猫が避妊をすることになります(当院の患者さんの猫も95%以上は避妊済み)。しかし、犬の場合は猫ほどのわずらわしさがないためか、機を逃すと中高齢まで未避妊のまま、ということも珍しくありません。

当院の立場としては、避妊手術のメリットがとても大きいため、基本的にはおススメするスタンスでお話をしています。

 

しかし、色んな不安や悩みなどから「迷っているんだけど、どうしても踏み切れない」という人が多いようです。そこで、この場で「どんな悩みが多いのか?」と「当院の見解」をまとめておきます。

 

悩み① 全身麻酔が怖くて手術に踏み切れない

最も多く聞くのは麻酔に対する不安です。「手術はしたいんだけど、麻酔が、、、」と言う方は珍しくありません。

実際は、麻酔のリスクと言うのは皆さんが思っている以上に小さいものです。当院は小さな一次病院ですが「健康体に対する麻酔」では開院以来事故が起きたことはありません(小さい病院ですが、既に1000件以上の全身麻酔を行っています)。

基本に忠実に正しい麻酔を心がければ、普通は事故になることはないのですね。

モチロン、重い持病がある状況とか、重病での緊急オペなどはリスクがぐんと上がりますが、それでも術中死というのは極めてまれです。

麻酔については信頼してお任せしていただくしかありませんが、ご心配や不安があれば遠慮なくご相談ください。

 

「ど~しても麻酔の不安がぬぐえない」と言う場合、二次診療施設や高度医療病院などで実施するという手もあります(普通は健康体に対する避妊や去勢では紹介することはありませんが)。

 

そういう施設では、麻酔を担当する獣医師がいますし、充実した設備で全身麻酔を実施していますので、事故が起こる可能性を最大限下げることができると思います。もちろん手間や費用は掛かりますが「麻酔の不安さえなければ手術をしたい」と言う場合には選択肢に入るかもしれません。

 

 

悩み② ウチのワンコは入院には耐えられなそう。。。

最近はペットとご家族の結びつきがとても強く「ご家族とちょっとも離れられない」という犬も珍しくありません。

数時間のお預かりでもパニックになってしまい、ストレスで体調を崩すようなケースも経験したことがあります。そういうタイプの犬の場合、入院なんて考えられないかもしれません。

 

当院では、犬の避妊手術は基本は一泊としています。ただ、上記のような「どうしてもお預かりに向かない犬」の場合は、預かっている方がマイナスが大きくなってしまうので、日帰りとすることもあります。

 

ワンちゃんの性格や飼主さんの希望により、フレキシブルに対応していますので、入院しないとダメなの?と悩んでいる方は、一度相談してみてください。

 

悩み③ 避妊することは決めているが「いつ」やるかで迷っている。

もう一つ多いお悩み。手術することは決めているが手術の時期で悩んでいるというパターン。

実はこれに対する答えは明確です。

「手術をすることが決まっているのであれば待つ理由はない」

これが答えです(ただし発情中や発情直後は避けます)。

なお、当院では最も早い避妊手術の時期は生後6か月前後、発情が来る前とお話ししています(病院によって違いがあります)。

 

巷では「発情が一回来てからの方がいい」などという都市伝説もあるようですが、医学的根拠はありません。

むしろ「初回発情のくる前」に避妊を済ませると、乳腺腫瘍の発生率をほぼゼロできますので、(手術をすることを決めているのであれば)発情を経験させることはマイナスとなる可能性すらあります。

 

また、上記の【悩み②】にも関連しますが、生後半年などの早い段階でオペをすると、まだワンコも無邪気さが残っており、色んなことに適応しやすい時期のため、入院のストレスも受けにくいと考えています。年を重ねれば重ねるほど、ご家族との結びつきが強くなりますし、入院などの環境の変化に適応しずらくなる印象です。

 

「生後6か月とかそんな子犬の時期に手術なんてかわいそう」とか「まだ若いし危険じゃないの?」という(感情的な)意見を良く聞きますが、若いから特別かわいそうとか危険ということはありません。ちなみに、生後6か月と言うのは、重要な部分の成長はほぼ終わっています。内臓の機能も問題のない時期です。

欧米など「ペットはシェルターから引き取って飼う」という文化の国では、避妊や去勢はもっと早く実施します(3~4か月齢)。日本と違い欧米では、避妊や去勢をしないで飼うということは基本的にはないため、手術が完了していないと引き取ってもらう対象にならないのです。

つまり、生後6か月という年齢の手術が早すぎることはありませんのでご安心ください。

 

他にも疑問質問があれば、遠慮なくお問い合わせください。避妊手術の資料も用意しています。資料だけお持ちになっていただいても構いません。もちろん手術のやり方や料金などを他院と比較していただいてもOKです。

 

病院の猫「ナコ」の闘病記録

さて、先月のお知らせでリンパ腫闘病中の病院看板猫「ナコ」のお話をしました→9月のお知らせ~ナコの話アリ

今までの詳細な経緯は過去記事(病院の猫がリンパ腫になりました 第0話をご覧ください。ここでは、ざっと振り返ります。

 

時は、2年前にさかのぼります。2019年11月某日。

  • ナコに「体重減少、完結的な嘔吐、食欲の低下」などの兆候や症状を認める
  • 各種検査を実施(血液、X線、エコーなど)
  • エコー検査で、小腸の壁構造に異常を確認
  • 試験的開腹手術を実施し、エコーで認められた小腸病変部を目視で確認
  • 小腸病変部の一部切除を実施し、病理検査に提出
  • 二件の病理検査で、リンパ腫(消化器型、低悪性度)と診断される

簡単にまとめるとこんな感じです。ここまでは過去記事で詳細に解説してきた内容です。興味のある方は過去記事へ飛んで下さい。前回の<9月のお知らせ>に全てのリンクを貼り付けてあります。

 

(※ちなみに「リンパ腫」と言う腫瘍はすべて悪性です。ですので悪性リンパ腫とは呼びません。リンパ腫と言うコトバの中にすでに悪性と言う意味が混ざっているというイメージですね)

 

その後、記事の更新が途絶えてしまい(💦申し訳ございません)今に至ります。つまり、その後の「ナコの治療」の部分をお伝えできていません。ですので、今月からナコの「治療」について、少しづつお話ししていきます。なお、一般の方向けですので、簡単な解説とさせていただきます(使用する言葉の定義は厳密ではないのでご了承ください)。

 

さて腫瘍、特に「がん(悪性腫瘍)」の治療の選択は大きく分けて3つ。内科、外科、それ以外です。

 

動物のリンパ腫の場合は比較的治療法が確立されていて、内科治療=抗がん剤治療がメインになることが多いです。外科治療の併用もありますが、メインが抗がん剤になることが多いんですね。詳しく説明すると専門的になってしまうので、ここでは、ナコの場合についてだけ解説していきます。

 

ナコのリンパ腫のタイプは<消化器型・低悪性度>でした。

 

この場合は、内科治療=抗がん剤の治療が第一選択となります。抗がん剤にもたくさんの種類がありますが、このタイプでは飲み薬の抗がん剤を選択することがほとんどです。今回の使用した具体的な治療薬は次の通りです(投薬量などは割愛)。

 

  1. クロラムブシル→抗がん剤(飲み薬)
  2. プレドニゾロン→ステロイド剤(抗がん剤ではないが併用する)

 

ナコのリンパ腫は幸い「低悪性度」であり、ある報告では上記の投薬での奏効率は96%、寛解期間の中央値は786日と報告されています。ちょっと難しい言葉が出てきたので簡単に捕捉します(一般の方向けですので、厳密な定義ではありません)。

 

  • 奏効率→治療がうまくいく(治るという意味ではない)可能性
  • 寛解期間→症状がなく、病気が治った状況に近い状態の期間(真の意味の完治とは別)

 

こんな感じです。猫の低悪性度・消化器型リンパ腫の場合は、ざっくりいうと「抗がん剤治療をしていれば平均2年ぐらいは良い状態でいられる可能性が高いよね」こんなイメージです。もちろん、平均ですから、それ以上もそれ以下もありますし、そもそも抗がん剤が効かない可能性もないわけではありません。

 

こればかりは「治療してみないとわからない」ということになります。平均や確率はあくまで平均や確率で、個々の猫それぞれに当てはまるわけではないのです。

 

さて、皆さんは抗がん剤と聞くと、どういうイメージがありますか?

  • なんとなく怖い
  • 強そうな薬
  • 副作用がキツそう
  • 延命治療でしょ?
  • お金かかりそう

こんな感じでしょうか。

それぞれいろんなイメージをもたれているかと思います。が、通常は「マイナス」「負」のイメージを持ってる方が圧倒的に多いですよね。それでいて、結果については「治療してみないとわからない」だったら、まずは「やりたくないなー」そう感じてしまうのも無理はありません。「絶対治るならやる」という人もいますが、残念ながら医療において「絶対」はありません(あるのはドラマの世界だけです)。

 

ナコの場合の選択はというと・・・「治療一択」でした。

 

もちろん「やってもだめかもしれない」ということも想定します。「副作用が出るのでは?手間がかかる?コストが?」ということも考えます。スタッフもかわいがっていますので、病院の猫とはいえ当然心配はあります。でも結局は「治してあげたい」という気持ちが、どんな感情よりも上になります。そう考えると、それ以外のことは小さく感じるものです。

 

何かを得るには、何かを捨てる必要が有ります。

そして、順番は捨てるのが先。

 

これは世の常、原理原則で「痛みを受け入れてから利を得る」というこの順番しかありません。僭越ですが「あれもヤダこれもヤダ、でもプラスが欲しい」というのは全てにおいて上手くいかないものです。

 

少し話がそれました。とにかく、ナコは治療をすることになるのでした。

抗がん剤の初回投薬は2019年11月21日。

  • 治療反応は?
  • 副作用は?
  • 費用は?

など、どんな感じなのか興味のある方もいるかもしれません。次回は、そんな治療中のことをお話ししたいと思います。

来月の更新をお待ちください。

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