今回のテーマはペット保険
9月のお知らせでもお話ししましたが、ここ最近「ペット保険」「どうぶつ保険」に入りたい、入ったほうがいいのか?など「保険」に関する質問がとても多く感じます。
たくさんの質問をお受けして思うのが、まずは「保険」というものを正しく理解することが大事ではないか?ということです。
こういう「そもそも論」のお話ですね。
今回はこれをテーマにお話をしてみたいと思います。
なお、病院や獣医師は保険販売の資格があるわけではないので、特定の商品をおすすめすることはできません。あくまで一般論に即した助言=アドバイスをするという形でお話いたします。
(※以下、院長の私見をもとに「保険」の考え方などについてお話ししていきますが、もちろん「これが正しい!」とか「こうしなきゃダメ!」というモノではありません。最終的にはご家族の意思で決定してください。)
それでは行きましょう!
まず「保険」とは何か?これを正しく知る必要があると思います。
本来、保険というのは、めったに起こらないけど、起こった時にはめちゃくちゃ損失が大きい(低確率で損失大)という事象に対して備えるものといえます。ここでいう損失とは(破産するなど)人生が終わってしまうレベルの損失を言います。
例えば、子供がいるご家庭で一家の大黒柱が死亡してしまったケースでは大きな損失が発生します。そのために「死亡保険(掛け捨て)」が必要です。
また、自動車事故でヒトを死亡させてしまった、などという場合も億単位の賠償金が必要となります。そのため「対人対物の損害保険」が必要になります。
ほかにも家屋の火災も低確率で損失大ですから、「火災保険」も必要性が高い保険といえます。
このように、起こる確率は低いけど起きたときに経済的にものすごく困る、ということに備えるため、保険加入者で少しづつお金を出し合い助け合う、これが本来の保険の意義と言えます。
ではペットの保険はどうでしょうか?
上記の話を元にすると、ご家族が「うちのペットが病気になった時に経済的な損失がとても大きい(破産する、人生が終わるというレベル)」と考えるのであれば、保険が必要かもしれませんが、はたしてどうでしょうか・・・?
質問を聞いていると保険に入ることが前提となっている方が多く感じます。まず「本当に保険が必要なのか?」一度はここから問いかけてみてください。
このような話をすると
「いや、別にペットが病気になっても破産するわけじゃないけど、安心だから入りたいんだよ!安心を買ってるんだよ!」
という意見が必ず挙がります。
もちろん心理的、気持ち的なこともとても重要なので否定はしません。しかし、こういう「気持ち的なところ」は、もはや信仰や宗教と同じなので、このような場合は特に私たちからアドバイスするべきことはありません。
保険に入っていたほうが気持ち的に「安心」だから気軽に病院にも行きやすいし、その結果治療に熱心に取り組めるんだ、という方も実際にいますので、気持ちの問題も結構重要なポイントではあります。その場合は、ご自身の気持ちに正直に保険に加入するのが良いのではないかと思います。
ただ、アドバイスを求められる立場としては「気持ちと切り離したところ」での保険の考え方をお伝えしないと意味がないと思いますので、上記のような話をすることになるんですね。
さて、入ると決めたときにどのような保険を選ぶのか?今はペット保険もたくさんあるので、選ぶのが難しく感じると思います。
最も大事なのは、どこの会社の保険を買うか?ではなくて、自分がどのような保障内容を求めているのか?まずはそれを決めることです。
保障内容というのは、普段の通院から手厚く保障が欲しいのか?大きな手術の時だけ保障が欲しいのか?などなど、具体的に「こういう時にこうしてほしい」という内容です。
間違っても「窓口精算ができるかどうか?」ということを第一に保険を選ばないでください。当院でも「アニコム損保」だけは窓口精算対応をしていますが、特にお勧めしてるわけではありません。
当たり前ですが、窓口精算可能かどうか?というのは保障内容とは全く関係のない話です。窓口精算が可能でも保障内容が自分の希望のものでなければ意味がないですよね?
さらに、窓口精算可能かどうかで選ばれている方は「それ」を第一で選んでいるので、実は最も肝心な保障内容をよく知らないで契約しているパターンも多く注意が必要です。いざというときに自分が希望する保障を受けることができないかもしれません!すでに保険に加入している方はご自身の保険がどのようなときに保険適応となるのかよく確認しておくことをおすすめします。
基本的に、ペット保険では医療費の全額が保険金として支払われることはなく「医療費の一部を保険会社が負担してくれる」という構造になっています。保険金が出てもご家族にも必ず負担があるということです。
ご家族の負担は
①毎月の保険料+②医療費の一部
という図式です。当たり前ですが①の部分は毎月かかる固定費です。病気になってもならなくても支払う費用となります。そして①の部分は「掛け捨て」ですから、残るものはありません。
さて、そうすると「貯蓄」という方法もあるのかな?というのが、わたしの個人的な意見です。
愛するペットのために毎月5,000円とか10,000円とか貯金(※もちろん運用でも構いません)してみるのも一つの方法です。5,000円を10年間積み立てれば60万円。10,000円なら120万円。結構な金額ですよね?10歳ぐらいになると、いろいろと医療費がかかる可能性が高くなりますが、その時にペットのためにまとまった貯金があると思うと少し安心できるのではないでしょうか?
もちろん、その間に大きな病気になったり、慢性病になればお金がたまる前にそこそこの負担が出てしまうかもしれません。こればかりは生き物ですから、どうなるかは神様にもわかりません。ただ、仮に5歳で大きな病気になったとしても、月5000円の積み立てで30万円は貯まっている計算です。そんなに悪くない方法だと思うのですが・・・はたして、みなさんはどう思われるでしょうか?
今回の趣旨とは少しズレますが、かなり多い「そちらでは保険が使えますか?」という質問に捕捉回答しておきます。
これについての答えは一択 「わかりません!」 となります。
別に意地悪で言っているわけではなく、本当に「わからない」のです。
当たり前ですが、ペット保険の契約の際に、動物病院は関わっていませんよね?ご家族と保険会社の二者間で契約をしたハズです。その契約内容は第三者には知るすべがありません。もし知っていたら個人情報がダダ漏れです💦。
保険が使えるかどうかは契約内容によりますから、契約内容を知らない立場である動物病院は保険が使えるかどうかを判定する立場ではないのです。
つまり動物病院は、そもそも「使えます」とも「使えません」とも言える立場にないということ。
「え?窓口精算対応の時は病院の判断で使えてるんじゃないの?」
と思う方もいるかもしれませんが、これも保険使用が確定しているわけではありません。アニコム損保を例としてお話しすると、仕組みとしては、アニコム側が保険適応と指定する病気だと獣医師が判定した場合は、病院窓口で一旦(仮の)保険金処理がされますが、これはあくまで一時的に保険判定の代理をしているだけで、まだ保険使用が確定したわけではありません。後日、保険会社が調査した結果、もし保険適応外という判定が下されれば改めて契約者(ご家族)に医療費用が請求されることもあります。
つまり、あくまでも「保険適応かどうかを最終的に決定するのは保険会社である」ということです。
※なお「保険が使えますか?」という質問が「窓口精算対応ですか?」という意味の場合については、当院の場合は「アニコム損保」のみ窓口精算が対応です。上述のように、厳密には「窓口精算可=保険使用可」ではありません。
さいごに
さて、ここまで「保険」についての根本のお話をしてきました。保険がダメと言っているわけではないのですが、入る前に考えることもあるよ!ということでお話ししました。最終的に保険加入することに決めたのなら、ペットのためにより良い選択ができればいいですね。
長いことお付き合いいただきありがとうございます。保険で悩まれている方、新しい発見はありましたか?最終的には、ご家族がどう決定するかがとても重要ですが、この記事がその判断の一助となれば幸いです。