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肥満と偏食を考える ~現代ペットの重要課題~
近年、肥満の犬がものすごく増えています。そしてそれに伴い、様々なトラブルも急増。
具体的には
- 若いうちからの肥満による早期の関節炎や靭帯損傷
- すい臓炎や胆嚢疾患などの内臓のトラブル
などは、一昔前に比べると明らかに増えています。
そこで、今回のテーマは「肥満」、そして「肥満」に非常に関連が深い「偏食」についてもお話ししていきたいと思います。
最初に結論を言うと、肥満や偏食で良いことは一つもありません。厳しいかもしれませんが、ご自身のペットを肥満にしてしまっているご家族は、それが理由の怪我や病気に見舞われた場合「それを受け入れる覚悟」をもっていただきたいと思います。
体重が増える理由はシンプル
体重が増えるメカニズムは非常に簡単で、何も難しい話はありません。
銀行預金と一緒です。銀行への入金よりも、銀行からの出金が少なければ預金が増えますよね?これをカラダに置き換えれば、体重が増えている状況と言えます。
つまり、預金をエネルギーに置き換えて考えると
摂取したエネルギー > 消費したエネルギー
となっている時に、差し引きされた分が体に脂肪として蓄積し体重が増えていきます。預金なら嬉しいですが、体重の場合はそうはいきません。理論はこれだけです。ということは、体重を減らすには、消費するエネルギーを増やすか、接種するエネルギーを減らすしかないのです。
これについては後に「減量するには?」という項目でお話ししていきます。
まずは、肥満に陥ってしまう理由として重要な「偏食」についてお話ししたいとと思います。
「偏食」は肥満の入口
近年は、肥満の犬だけでなく、偏食の犬もめちゃくちゃ多くなっています。肥満の犬と偏食の犬には強い相関関係があります。
肥満のワンちゃんの飼主さんにお話を聞くと「うちの子はゴハンを全然食べないのに~」とおっしゃることが結構あるんですね。コントや落語みたいに聞こえるかもしれませんが、ホントによくある話です。
これは、要は「バランスの良い食事は食べない」で「オヤツや嗜好品ばかりを食べている」という意味ですね。
オヤツや嗜好品はみなさんが思っているよりも本当にカロリーが高く、少量を与えているつもりでも一日の必要エネルギーを簡単に超えてしまいます。特に小型の犬では本当にすぐにカロリーオーバーとなります。ですから「食べてないように思えるのに体重が増えてしまう」となってしまうのですね。
こういう犬はたいていひどい偏食になっており、味の良いモノしか食べません。新しいフードを買っても「最初の一口だけ食べてあとは見向きもしない」なんてことも多く、たくさんのご家族が犬の偏食に振り回されて困っています。
さて、偏食の入口は幼少期。生後4~5か月ぐらいにあります。
この時期の食育は非常に重要で、対応を間違えると偏食の沼にズブズブと嵌ってしまい、なかなか抜け出せなくなってしまいます。
犬では生後4~5か月ぐらいから成長のスピードが緩やかになっていきます。生後2~4か月ぐらいまでは、ガツガツとフードを食べる犬が多いのですが、成長が緩やかなこの時期になってくると、今までみたいにガツガツと食事しなくても大丈夫、少しガマンが利くカラダになっているんですね。そのため、犬によってはフードを食べるスピードが落ちてきたり、遊びながら食べてみたり、少し残してみたり、なんていうシーンが出てくるようになります。
食事に対する執着は犬によっても違うのですが、近年は小型犬を中心に、食事にそれほど執着しないタイプの犬(特にトイプードルに多い)も多く、特にそういう性質の子ではこの時期、生後4~5か月ぐらいになると「急に食べなくなった!」、「食欲がない!」といった印象になるご家族が多いようです。
このタイミング、ココがものすごく重要です。
多くのご家族で「今までガツガツ食べていたのにどうしたのだろうか?」と過剰に不安に思ってしまい、試しに色々なフードや嗜好品(オヤツ類)を与えるという行動に出てしまいます。
この行動が偏食の入口なんです。
そうすると、犬はいろいろな食べ物を知り、次第ににその中で一番美味しいもの、好きなモノだけを要求するようになっていきます。ちょうど知恵もついてきている時期で「なるほど、普段のフードを食べなければオヤツが出てくるじゃん!」というのもしっかりと覚えてしまいますから、上手に立ち回り自分の好むものだけをゲットするようになります。
ご家族は「食べてくれるという安心感」から、犬の要求に答え好むものを与え続けます。すると、今度は「それ」も食べなくなっていきます。そしてさらに味の良いモノへ・・・という偏食の無限ループへ突入。
犬の脳と味覚は完全におかしくなり、極度に偏食の犬が完成します。
私もそれなりに長く獣医師をやっていますので、この無限ループの結果
- チャーシューしか食べない
- ソーセージしか食べない
- 牛肉しか食べない(しかもサシの入ったもの!)
などという極度の偏食犬もたくさん経験してきました。ご家族はもうあきらめていて「それ」を与え続けています。
生後4~5か月ごろのご家族の対応で「犬が偏食になるかどうかが決まる」と言っても過言ではありません。
そして、偏食になると、その犬の未来は「肥満」も約束されたようなものです。
本当に体調不良で食べないのか?それとも「そういう時期」に来て食べることに執着しなくなっているのか?ご家族にはココを良く見極めていただき、この時期の食育を絶対に間違えて欲しくないです。
食事を目の前にして餓死する犬はいないと言われています。
この生後4~5か月のときに訪れる「今までよりも食べが悪いな」っていう時期になったら、慌てず落ち着いて一度食事を下げてみてください。今はそういう(お腹が空いている)タイミングじゃない、ってことなので。
そして、しばらくして改めて食事を出す、この繰り返しをまずは試していただきたいです。くれぐれもこの時期に、嗜好品を過度に経験させないように気を付けてください。個人的には一歳を過ぎるまでは、嗜好性の高いフードや市販のオヤツ類は避けていただくことを強くお勧めしています。
偏食は肥満の入口です。偏食になってから治していくのは本当に大変です。
肥満が引き起こすトラブル
さて、これからは医療目線から「肥満が引き起こすトラブル」を簡単に解説いたします。
肥満が原因のトラブルの場合、肥満が解消されないとよくなることはありません。われわれ人間も整形外科に行って「膝や腰が痛い」というと「痩せてね」とバッサリ切り捨てられるのは良く聞く話です。お医者さんは、長い眼で言うと「どんな治療をしても痩せないと良くならないよ」ということを言いたいのですね。
犬の場合も同様で、肥満が元のトラブルは「それ」が改善しないとなかなかうまくいきません。
肥満の犬ではたくさんのトラブルが起こります。代表的なのは、内臓疾患や関節疾患です。地味ですが肥満の場合、皮膚にも多くの力がかかったり、シワ部が増えたりするため、肥満犬の方が皮膚のコンディションが悪くなることが多いですね。具体例を列挙します。
- 変形性関節症
- 十字靭帯断裂(膝関節)
- 気管虚脱(頸部脂肪による気管の圧迫)
- 急性膵炎、慢性膵炎など膵臓疾患
- 糖尿病
- 脂質代謝異常に伴う胆嚢疾患(胆石、胆泥、胆嚢破裂など)
- 皮膚疾患(肢端、肘、シワ部など)
どれも肥満の犬にはよく見られるトラブルですね。足腰が痛くても命には関わりませんが、すい臓炎や胆嚢疾患は命に関わることも珍しくありません。
- 病気になってから対策=減量するのか?
- 病気にならぬよう今から体重のコントロールをするのか?
どちらが愛するペットにとっていいのか?よく考えていただきたいと思います。
減量するには?
では、どうやったら減量ができるのでしょうか?
と言っても、目新しいことはなく「摂取するエネルギー」を減らす。ことしかありません。
「え?消費するエネルギーを増やせばいいのでは?」
と思う人も多いですよね。
実際、診療中に肥満のハナシになると
「もっと散歩の時間を増やしたした方がいいですか?」とか「毎日散歩に行くようにします」などとおっしゃる方がとても多いです。
残念ですが結論を言うと、散歩を多少増やしたところで消費するエネルギーは増えません。もう少し正確にいうと、消費エネルギーは多少増えますが、減量できるレベルにはならないということです。減量できるレベルに消費するエネルギーを増やそうとすると「トレーニングレベルの運動」が必要です。
モチロン散歩をするなということではないですよ。散歩など適度な運動は重要で、足腰を刺激したり、気分転換であったり、様々な環境に順応するためであったり、たくさんの意味がありますから、散歩はしてください。ここで言ってるのは、散歩を多少増やしたところで体重を減らす効果はない、ということです。
ということで、体重をコントロールするには、現実的には「摂取するエネルギーを減らす」しかないのですね。
もちろん、現在、適正体重でコントロールできているのであれば、特段何も変える必要はありませんしかし、肥満の状況、もしくは常に体重が増えているケースでは何かを変えない限りは体重も変わらなんですね。ここまでの話は誰でも理解できるシンプルなハナシで、皆さんも気づいているハズのことです。実際はこのシンプルなことを実践するのが難しいことはよくわかります。が、あなたの知らない特別なダイエット法とかそういうモノはありません。このシンプルなメカニズムを受け入れて前向きに取り組んだ方だけが正しい減量に取り組むことができるのです。
結局、摂取するエネルギーを減らすということは、普段の食事や嗜好品(おやつ類)などを見直すということ、その単純なハナシに行きつきます。
食事量の決めかた
食事量をどのようにしてよいかわからないという人が多くいらっしゃいます。
フードのパッケージの裏側には「○○kgの犬には△△g」という感じで、食事量の目安が記載されていると思います。モチロン一つの目安ですからまずはコレを利用しても構いません。しかし、一般的にはフードのパッケージに記載されている量は「多めの量」と思ってください。人間でも、男性で筋肉ムキムキの40kgプロボクサーと、華奢な40kgの女性とでは必要なエネルギーや栄養素は異なります。同様に、犬も5kgと言っても色々な状況の犬がいますので「5kg=○○g」と言うのは少々乱暴なんですね。
私がおススメするのは「体重を適期的に測りどのように推移しているか?」を見ることです。
数字はウソをつきませんので、いつ測っても体重が増えているのであれば、シンプルに現在の食事量(当然オヤツなど嗜好品も含みます)が多いということになります。
それが、もしパッケージに記載されているの量だとしても「その子には多い」ということになります。体重が平行線であれば、現在の投与量が現体重をキープする量ということで、体重が下降線であれば今の量は減量に適してる量ということになります。
嗜好品の与え方
愛するペットが「美味しそうにものを食べる姿」はとても癒されますよね。確かに、時には「美味しそうなご褒美を与えたいな」と言うのもごく自然な感情です。なので、わたしも「与えるな」とは言いません。
まずは、日々犬とのコミュニケーションのために使う「ご褒美」と、時には良いモノ食べさせてあげたいなという「ご褒美」とは分けて考えるのがすごく大事です。
ワンちゃんとは会話ができませんので、褒めてあげたい時など、コミュニケーションを取りたいときにはごく少量の「ご褒美」を使います。理想は「普段食べてるドライフードを一粒」みたいな感じがいいかと思います。コミュニケーションを取るタイミングは一日の中で何度もありますから、そのたびに美味しい嗜好品を与えてしまうとすぐにカロリーオーバーになってしまいます。コミュニケーションをとるのが目的ですから量もごく少量でいいのです。ワンちゃんにとっては「褒めてもらえた」という事実が重要で、量をたくさん与える必要はありません。
「時には美味しいモノを与えてみたい」と言うのも自然な感情です。例えば、何かのイベントの時やワンコの誕生日の時など、節目節目で豪華なご褒美と言うのは楽しみの一つですし、思い出にも残ると思います。こういう時はお腹を壊さない範囲で思い思い可愛がってあげて欲しいと思います。
大事なのは「それ」が頻繁にならないこと、多くても月に1~2回などと限定してください。毎日のように与えると、犬は「それが当たり前なんだ」と言うように脳にインプットしてしまい常に「それ」を要求するようになります。前にも述べましたが偏食への道まっしぐらですね。
私たちも、毎日のように寿司とステーキとか、毎食後にケーキを食べたりなどとはしませんよね?それと同じで、こういう「ご褒美」は何かのイベントなどの時に取っておきましょう。
色んな人を見ていますが、おやつや嗜好品を与えることが毎日の習慣になっている人がものすごく多いです。コミュニケーションのために使うご褒美と、イベントごとのご褒美とでは意味が全然違いますので、良く考えて取り組んでほしいと思います。
まとめ
肥満と偏食について、院長の考えを述べてきました。
私が幼少期に飼っていた犬は食べないモノはありませんでした。それがいいか悪いかは別ですが、肥満でもなくロクに動物病院に行ったこともなかったですが、良い年までトラブルなく天寿を全うしたと思います。
時代は変わり、ある意味豊かになりすぎたのか、ホームセンターやペット用品店では売り場の半分を嗜好品が占めているような状況です。愛犬に美味しいものを食べさせてあげたい、という気持ちはとてもよくわかりますが「やり方」を間違っている方が多すぎると感じています。やり方の間違いから「偏食→肥満→病気」という連鎖に陥っている犬を、誇張ではなく本当にたくさん見てきています。
そして、みなさん病気になってから肥満や偏食の対策をしようとしますが、これは本当に大変。
一度習慣になったことを変えることはなかなか難しいのです。
できるだけ、若いうちからの食育、肥満対策をご家族全員で共有することが本当に大事です。本当のやさしさとは何か?その気持ちを持ってペットに接していただきたいと思います。
それでは。