たいへん遅くなりましたが10月のお知らせです。寒い日だいぶ増え、急な気候変動のため体調が保ちにくいかもしれません。ご家族、ペットともに健康状態には十分お気を付けください。
寒暖差や寒冷刺激によりくしゃみや鼻水、上部気道炎症状が増える時期です。「おかしいな?」と思ったらお早めにご相談下さい。
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二次診療施設のハナシ
近年は動物医療も高度化の流れとなっており、ヒトと同レベルの検査や診断、治療が可能になってきています。
一般的に「高度」とされる検査や治療を実施するのがいわゆる「二次診療施設」となります。
当院のような小さな町のお医者さんは「一次診療施設」ということになりますね。
ヒトで言えば、近所のクリニックが一次診療で君津中央病院が二次診療、と言う感じです。
さて、以前に比べると、当院からも「二次診療施設」に紹介する症例がとても増えてきました。
今回は、どういったケースで二次診療施設を紹介することが多いのか?、紹介先ではどのような医療を受けるのか?、費用は?、移動は?などなど、皆さんが抱きやすい疑問や質問について、よくあるケースを中心にお話ししたいと思います。
「今はまだうちのコは若いからカンケーない」
と思っている方も、いつ何時「高度な医療」が必要となるかはわかりません。若い動物でも、先天性の難しい病気が見つかれば二次診療施設への紹介となるケースも少なくありません。
知っておいて損のない内容だと思いますので、ぜひご覧ください。
どんな時に紹介するの?
まず、二次診療施設を紹介するケースはどんな時でしょうか?
簡単に言うと「当院でできない検査や治療を提案する時」となります。まあ当たり前ですね(笑)
以下、二次診療施設に紹介する「よくあるケース」についてお話ししていきましょう。
よく紹介する検査
検査としては、MRI検査やCT検査などの画像検査が必要なときに紹介することが多いです。MRIやCT検査機器を個人病院で導入するのはかなり難しいです。中には個人経営の動物病院で導入されているところもあるようですが、基本的には当院のような一次診療病院にはこういった設備は無いことがほとんどです。
さて、ではどんな時にMRIやCT検査が必要となるのでしょうか?
<MRI検査>
まずMRI検査ですが、MRI検査では「軟部組織」を「断層像」として見ることが可能です。その中でも特に「神経系」を見たいときに紹介することがとても多いです。神経系の病気を疑う時にはどうしても外せない検査となります。なお、MRI検査を実施する場合は全身麻酔が必要です。
例えば、痙攣発作、四肢のふらつき、震え、運動失調、神経痛などを疑う症状、所見が出ているときはMRI検査の対象として挙げられます。
具体例を挙げましょう。
- 椎間板ヘルニアを疑う症例では病変部位や程度を評価するため、そして手術適応かどうかの評価のためMRI検査を実施します。
- 痙攣発作が頻繁に出る症例では脳に病変があるかないかで治療方針が変わります。そのため脳のMRI検査を実施します。
このあたりが神経病の代表例、当院でも良く遭遇するケースです。
こういったときは、本当はすぐにでもMRI検査を実施したいところなんですが、現実的には「すぐに」は難しいため、まずは一時的な医療を実施しながら、検査の必要性を探っていくことが多くなります。そして、これは間違いなくMRI検査を実施すべきだ、と判断した場合はご紹介することになるのですね。
<CT検査>
続いてCT検査。CT検査はカンタンに言うと「X線検査(レントゲン検査)のスゴイ版」と思ってください。「X線を全周からカラダに照射することで立体的なX線画像を作り出す」そんなイメージです。単純なX線検査に比べると情報量の差はもう圧倒的です。原因が良くわからない病気を相手にするときはCT検査を「スクリーニング検査(振るい分けのための検査)」として実施することもあるぐらい、それぐらい情報量が多い検査です。
CT検査は、もはやすべての病気を診断する時の検査として有効といえますが、その中でも例を挙げると、骨や関節のトラブルでは形状を立体的に評価できるため有効性がとても高い検査となります。また、腫瘍摘出を考えている症例では、腫瘍の広がりや他臓器・血管・神経との関係(どこまで腫瘍が浸潤しているか)をなどを評価することができるため、しっかりとしたオペ計画を立てることができます。よってCT検査の有無が手術の成否にかかわることもあるのです。他にも、CT検査は様々な病気の診断や治療に役立ちますが、あまりに多くなるため割愛します。
よく紹介する治療
治療としては、当院の技術では難しい治療、専門の設備が必要な治療、輸血が必要な治療、などが紹介の対象となります。
<難しい治療>
脳や脊髄などの神経系の手術、心臓や肺など開胸が必要な手術、これらは当院にとっては難しい治療となります。自分が難しいと感じるものを無理くりやることはできません。こういった分野のエキスパートに頼むべき内容と言えます。
<専門の設備が必要>
例えば整形外科。骨折の手術を例にしましょう。骨折と一口に言っても色々なパターンがあります。そして動物ならではの難しさとして、体重も1kg台の犬から40kg以上の大型犬まで多種多様。ということはこれらのすべてのパターンに対応できる準備をしないといけないわけです。技術面もモチロン、道具の準備という面だけでも個人病院にはかなりハードルの高い内容です。
当院では、よくある典型パターンの整形外科には対応できるようにしています。例えばトイ種、5kgぐらいまでの単純骨折など。こういうのは揃える道具も少ないため実施可能です。しかし、大型犬の複雑な骨折などはそもそも道具を準備していません。なので、典型パターン以外の骨折は整形外科の専門病院を紹介しています。
他には眼科疾患。特に眼科の手術は専門の設備(手術用の顕微鏡)が必要となり、あわせて高い技術レベルも求められます。そのため、例えば白内障の手術などは、眼科専門の病院をご紹介することとなります。
また悪性腫瘍に対する「放射線治療」を検討する場合は一般病院には設備が無いので紹介することになります。
上記はあくまで一例ですがこういった、フツーの病院ではできない検査や治療の場合に二次診療施設をご紹介することになります。
どのような施設に紹介するのか?
残念ながら当院の近隣には「二次診療施設」はありません。
大変ですが、少し離れた施設へのご紹介となることがほとんどです。以下一例をあげておきます。
- 日本動物高度医療センター(川崎市)
- ONEちば動物整形外科センター(船橋市)
- 動物眼科EyeVet(世田谷区)
- 各大学病院(関東では、東京大学、東京農工大学、日本大学、麻布大学など)
いずれも自動車で1~2時間圏内となります。
ここに挙げた施設以外も紹介することはありますが、いずれにしろ木更津近隣にはありません。
なお補足ですが、個人病院には「紹介する」ということはしていません。
「○○病院に行きたいのですが、紹介状を書いてほしい」といった依頼をもらうこともありますが、このケースでは紹介状は書けません。
その代わり「現症証明書」という現在の病状や治療を記載した書類を作りますので、ご自身の判断で希望の動物病院を受診していただくこととなります。
これは、意地悪でやっていると言うわけではなく「紹介する」というのは私たち紹介元にも責任が生じることになるからです。ですので、私が良く把握している施設を責任をもって紹介させていただかなくてはなりません。個別の病院については情報を把握してないので紹介という形をとることはできないのです。ただ、紹介という形でなくとも、上述のように書類は作成しますので「他の病院にかかりたい」と言う方がいましたら、それは当然の権利ですから遠慮なくご相談ください。
二次診療施設での診療費は?
高度な検査や治療をしたらすごくお金がかかるのではないか・・・?心配になる方も多いと思います。
費用に関しては、施設による違いもありますし、もちろん実施する検査や治療の内容にもよりますから「受診してみないとわからない」というのが現実です。
ただ、基本は「それなりの費用がかかる」と思って望んでください。
例えばよくあるケースとしてMRI検査を受けるケースをお話しすると、経験的には「最低でも10万円~高ければ30万円」と言う費用がかかることが多いです。これを安いと感じるか高いと感じるかは個人の感覚なのでどう捉えるかは人それぞれですが「こういった金額が検査だけでもかかるんだ」と思っていたほうがいいです。「検査だけでも」です。
「MRI検査」と言っても、どのぐらいの範囲の画像を撮るのか?造影剤を使うのか?どのような撮影条件で検査するのか?などなど、検査の詳細については、検査を進めながらの判断となることも多く、最初の段階で「明確に○○円です」というような費用の明言はしずらいのです。またMRI検査は、動物では麻酔をかけての検査となるため、麻酔の技術料やそれに伴う麻酔前の検査費用なども発生することになります。
他の検査や治療も考え方は同様。やりながら詳細が決まってくるので、○○円と言うようにカッチリ明言はできないのが普通です。
費用の質問はとても多いのですが、上記理由もあって、お答えとしては「それなりにかかりますよ」としかお伝え出来ません。
中には「○○円までなら出せるけどそれ以上ならムリ」というような相談を受けることがあります。しかし、くどいようですが前述のようにやってみないとわからないことも多く、明確な金額は提示できずどうしても幅を持ってお伝えすることになります。こう言うと厳しいと思われるかもしれませんが、コスト面にリミットがある場合は二次診療施設の受診については慎重に検討した方が良いと思います。
さらに、検査だけでなく「治療や入院も」となると、モノによってはかなりの金額になります。
「検査だけ頑張って受けて診断はついたけど治療費が出せない」と言うのはすごく中途半端になってしまいます。このあたりのところまで総合的に考えて受診希望かどうかを検討していただくことになります。
二次診療施設への移動は?
木更津近隣には二次診療施設が無いため、受診するには自動車を使う必要が有ります。
普段から車の運転に慣れている方は良いとして、運転や高速道路に自信が無い、免許を持っていないというケースでの相談も多いのが実際です。
ご自身での運転が難しい場合、公共交通機関は現実的ではないので、どなたかに運転をお願いするしかありません。親戚や知人に頼れれば良いのですが、それが難しい場合は「移動手段が確保できないので二次診療施設の受診をあきらめる」というケースも時々あります。あとは、ペットタクシーのような選択が一応あるにはあるのですが、かなり高額になってしまいます。
ご自身のペットが今は元気でも、いつ二次診療施設の受診が必要になるかはわかりません。もしものとき、車の運転を頼めそうな環境かどうか?頼れそうな人はいるか?なんとなくでいいので、想像しておくことをお勧めします。
さいごに
動物医療も高度化の流れのため「より良い検査、より良い治療を提案する義務」が私たち獣医師にはあります。
自分にできない治療や検査だからと言って「○○で様子を見ましょう」と片付けてはいけない時代になっているのです。
ただ、実際には二次診療施設を提案・紹介した時に
「うちは難しいです」
と断られることは珍しいわけではありません。当院も「何が何でも紹介」というスタンスではありません。
現実的にはコストや移動手段の問題を解決できず、それを理由に断念する方もたくさんいらっしゃいました。その場合は、理想的な検査や治療はできませんが、当院のできる限りでの対応をご提案します。
「うちのコは若いし元気だし、二次診療施設なんてカンケーないな!」と思っている方も「いつどうなるかわからないのが病気や怪我」です。
今回のようなハナシを知っておくだけでも絶対マイナスにはならないです。できれば「もし当事者になったら自分は二次診療施設に連れていけるだろうか?」と言うシミュレーションもしていただくとより良いと思います。
今回は、長いお話に最後までお付き合いいただきありがとうございます。それではまた。