たいへん遅くなりましたが9月のお知らせです。
さて、ワンちゃんでは「春の健康診断」を受けられた方がとても多くいますが、それから半年近くたちました。ワンちゃんの1年は人間の4~5年に相当すると言われています。モチロン単純計算はできませんが、犬の半年と言うと2年経ったという感じです。実は、秋も健康診断キャンペーンをやっています。ぜひ秋の健診もご検討ください。そして、今回は病院で実施するいろんな検査の意味と「健康診断」についてをトピックとしてまとめています。ぜひご覧下さい。
9月の診療予定
臨時休診
- 9月28日(木)の午後を臨時休診とさせていただきます。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。
9月は祝日があります!
当院は日祝休診ですので、下記祝日も休診です。ご注意ください。
- 9/18(月祝)…敬老の日
- 9/23(土祝)…秋分の日
最新情報はLINEが便利、まだの方は是非ご登録を↓
休診案内などはLINE@が便利!
臨時休診などの案内はLINE@が便利です。画像のように看板犬マルちゃんがお知らせ!まだの方はぜひご登録ください。
↓LINE@のご登録は下のボタンからどうぞ↓
病院で行う「検査」の意味と健康診断のススメ
医療現場ではいろいろな「検査」をします。
みなさんも良く知っている、血液検査、尿検査。これらは重要な体液の検査です。また、レントゲン、超音波(エコー)という検査も耳にしたことがあると思います。これらは基本的な画像検査ですね。
われわれ人間も、健康診断に行ったときに「お医者さんとお話をして聴診器を当てられて、ハイおしまい」とはならないですよね。
必ず、血液検査や尿検査、その他検査を組み合わせて健康状態を調べるはずです。人間ドックならもっとたくさんの検査を実施するはずです。
これは、犬や猫でもモチロン同様です。
「犬や猫でもそんな検査をするんですか??」と言われる方が意外と多くビックリしますが、今はヒトと同様の検査をすることは通常です。全く珍しくありません。
さて、あたりまえですが検査はそれぞれに意味があります。たくさんの検査が存在するということはその一つ一つが重要で、相互に補完し合って健診や診断が成り立っているということなんですね。
- 血液だけを調べれば体のことはすべてわかる
- どれか一つの検査をやればOK
などという、誤った感覚をお持ちの方が結構いらっしゃいます。
そこで、今回は「検査」のことを皆様にわかりやすくお伝えしようと思います。最後は各検査を組み合わせて実施する「健康診断」についてもお話しします。ぜひ最後までご覧ください。
そもそも検査とは?
検査とは、何らかの基準と比較して異常や悪いところがないかを調べることを言います。
血液検査であれば基準の数値と比較して高いか低いか、と言った感じですね。
しかし、検査は一つの検査だけで診断がついたり全てがわかったりすることはありません。というか、検査をたくさんやっても同様。検査だけで診断がつくわけではないのです。
「え?ちょっと何言ってるかわからない」と思いますよね(笑)
言いたいのは「あくまで診断をつけるのは獣医師(ヒトであれば医師)のアタマ」だということ。
検査は「数字」や「所見」を示すだけなのです。その数字や所見(=結果)を基に獣医師のアタマで「診断」を導く必要があります。そんなの当たり前じゃん??と思うかもしれませんが、すごく重要なポイントです。
同じ血液検査結果を見ても、同じレントゲンを見ても、獣医師Aと獣医師Bで診断が違うかもしれません。実際「他の病院で○○と診断された」と言う内容の転院やセカンドオピニオンで当院にいらっしゃるケース、私が結果を見て全く別の△△という診断になることも珍しくありません。
ちょっと話がそれてしまいましたが、言いたいのは
- 検査すると診断が出る→×
- 検査をして獣医師が導いて診断が出る(かも)→〇
といういこと。
われわれ獣医師が診断を導くときに情報量は多いに越したことはありません。ですので、数々の検査を組み合わせて情報を増やして、間違った診断・判断をしないようにするわけなのですね。
このヘンはなんというか、医療人の感覚的なハナシなので、一般のヒトにはちょっと理解しにくいかもしれませんが「検査をすればすぐに確定診断!ではない」ということは知っておいてください。
さて、この後は一般的な臨床検査として、血液検査、尿検査、X線検査、超音波検査について簡単に解説していきます。
体液の検査(血液検査と尿検査)
カラダに存在する重要な体液として、血液と尿があります。両方ともたくさんの情報を含んだ液体なので検査する意義はとても大きいです。
血液検査
知らない人はいないと思いますが、血液を採取して様々な物質がどのくらい存在するかを検査します。たくさんの検査項目があり、ヒトでも動物でも最も重要な検査の一つと言えます。血液検査は数字で結果が出ますが、基準の数値と比較して評価をしますね。
一つ覚えておいて欲しいのは「基準から外れた数字=異常ではない」ということです。基準から外れるとすぐに「異常値」と呼んでしまいますが、正しくは「基準外」と言います。それが本当に異常かどうかは、動物の状況やほかの検査から得られた結果を基に総合的に判断するわけです。ですから、血液でちょっとおかしな数字が出たからといって、すぐにびっくりしないでください。
また、最初に触れましたが、血液検査をすればすぐに確定診断がついたり、カラダの全てのことがわかるわけではありません。血液検査では、各項目の数字が出てくるだけです。それをどう評価するか、診断するかは血液検査機械ではなく、あくまで獣医師の仕事なんですね。基本的に血液の数字だけでは診断を導くことはできません。他の検査を組み合わせ、足りないところを補完しながら診断へと進んでいきます。
抽象的なハナシだったので、一つだけ具体例をあげておきましょう。
血液検査をしたら「血糖値」が高かった。さて、これは糖尿病と診断して良いでしょうか?ここまで読んだ方は「違う!」と答えてくれると思います。
仮に血糖値が「250」だったしましょう。犬や猫の基準はだいたい「100」前後なので「250」という数字は確かに高いのは間違いありません。しかし、この数字だから糖尿病とはなりません。血液検査が語っているのは「血糖値が250です」というただそれだけの事実。この数字が何を意味しているのかを人間のアタマで考えるわけです。
- 糖尿病?→可能性はゼロではない
- 一次的な興奮による高血糖?→よくある話
- 検査機械がおかしい?→まれにある
- 検査のやり方を間違えた?→ないとはいえない
私たちはこの数字を見たときに、すぐにこういったリストが頭に浮かびます。意外かもしれませんが、下の二つ、検査機械のトラブルや人為的ミスも可能性として考えます。ですので、あまりにおかしい結果の場合は検査を繰り返すこともあるのです。
そして「尿検査が必要だな」とか「糖尿病のマーカー検査をやろう」とか「すい臓の画像診断をしておこう」などなど、そういう検査の追加も考えていきます。
くどいようですが「血液検査だけですべての判断はできない」ということを知っておいていただくといいと思います。
尿検査
尿も体の中にある重要な体液で、尿検査でもいろいろな情報を得ることができます。主に水和状態や腎臓の働きについての情報を得られます。病気としては、膀胱炎や糖尿病を疑う時に異常所見が出ますので、その時にはできる限り実施する検査となります。
画像検査(X線検査と超音波検査)
画像検査の意味は「カラダを切ったりしないで中をみたい」ということです。代表的な画像検査のX線検査と超音波検査を解説します。
X線検査
X線検査はレントゲン検査と同義です。X線を体に照射して白黒の画像(レントゲン写真と言いますね)を撮ります。そして、簡単に言うとその白さと黒さ、その濃さの差をみて各臓器などの確認をします。確認するのは臓器の位置、サイズ、数、陰影度(白さ・黒さのこと)などの項目です。
ここでも重要なのは、X線検査でわかるのは診断ではなく「所見」であるということ。当たり前ですが、いくらX線写真とにらめっこしても、診断名がぼや~と浮かび上がってくるわけではないのです。医療ドラマなどでは「X線写真を眼の前にして医師が診断名をズバリ」みたいなシーンがありますが、あれは「ドラマ」だからです。
X線は白黒画像を示しているだけで、それ以上もそれ以下も言いません。やはり、診断は他の状況や検査結果を総合的に考えて、アタマの中で獣医師が導くわけです。
超音波検査
超音波検査はエコー検査と同義です。超音波を体に当てることで体の内部をリアルタイムで観察できます。X線検査との差を言うと、①超音波検査はリアルタイムで臓器の動きが見れる、②臓器の内部構造をミリ単位で細かく見れる、という大きなメリットがあり、動物医療では画像診断のエース的存在です。
当院でも超音波検査を多用しています。特に腹部のエコーは情報量がとても多く実施する機会が多いです。また、心臓のエコー検査ではリアルタイムで心臓の動きや、血液の流れを確認できるため非常に有効です。心臓の検査については前月(8月)のブログ記事もどうぞ
ただ、超音波検査においても、くどいようですがこれまで述べてきた検査と同様、画像上に診断名が出てくるわけではありません。
あくまで「所見」を得て、他の検査と組み合わせ、獣医師のアタマで診断・仮診断を導いていくことになります。
検査結果と診断
さて、各検査で所見を得て、そして獣医師はアタマを振り絞って診断・仮診断を導きます。
しかし、これらの検査をすべて実施しても、確定診断が出るとは限りません。仮診断にとどまるケースも多く、それに基づき治療をするか、さらなる精密検査を実施するかを考えます。
「なんだよ、診断つかないなら検査って意味ないな」と思われるかもしれません。しかし、臨床現場では逆にすぐに診断が出る方が珍しいです。
むしろ、カンタンに診断めいた言葉をいうドクターは気を付けたほうがいいと思います。医療はそんなに単純ではありません。
実際の現場では、すぐに確定診断がつかなくても状況を正しく把握し、仮診断~臨床診断を導けばそれほど間違った治療選択にはなりません。
現実的にはこれまで紹介した、血液、尿、X線、超音波などの検査が、獣医療域では「無麻酔ですぐに実施可能な検査」となります。ですので、まずはこれらの検査を組み合わせて動物の状況を把握→治療に入るというのが、病気を疑ったときの基本的な進め方になります。
こういった、検査~診断の流れついては、過去ブログ記事の連載【病院の猫「なこ」の闘病記録】の中で実例をもとに詳しく述べています。ぜひご覧になってみてください。
病気を疑う最初のシーンから、各検査の説明、そして精密検査としての試験開腹~病理組織検査、診断とその後の治療にいたるまでを詳細に綴っています。
病院猫「なこ」の闘病記録、検査編はコチラからぜひどうぞ→【第2話】病院の猫がリンパ腫になりました。
なお「なこ」は今は抗がん治療をしながら元気に暮らしています。病院をウロチョロしてることもあるので見かけることもあるかも?です(笑)
健康診断とは何か?
さて、最後に「健康診断」についての考え方を述べておきます。
まず「健康診断」と言っても、言うヒトによってその内容に大きな差があります。
実際「健康診断をしてください」という依頼はとても多いのですが、
- カラダを触ってくれればそれでいいです(身体検査をしてほしいという意味)という人
- とりあえず血液検査だけやってくれればいいという人
- いろんな検査をするのが普通でしょ?という人
これらのヒトがみんな「健康診断をしてください」と同じ言葉をおっしゃいます。
「健康診断」をご希望の方はぜひ「どのくらいの内容のことを考えているのか?」ご自身の希望を整理していただくといいと思います。「健康診断したいけど何をやったらいいかよくわからない」と言う場合は、もちろんアドバイスしますので遠慮なくご相談ください。
一般的に「健康診断」と言った場合は「いろいろな検査を実施して体の状態を確認する」と言うのが普通の感覚かと思います。これは、当院では「ペットドック」と言うプランでご紹介しています。
「ペットドック」はいつでもお受けしてますので、興味があればぜひご相談ください。ネットでの予約はできませんので直接お電話をいただければと思います。
また「たくさんの検査をするのは可哀そう、抵抗がある」という人も実際は多いので、「血液検査だけ」というプランも提案しています。
ワンちゃんの場合、当院では「春の健康診断キャンペーン」として、フィラリア検査時に「血液検査だけのプラン」で健康診断をご提案し、多くの方が実施していますが、秋も同じように健診キャンペーンを実施中です。外部委託による血液検査なので結果が出るまでお時間をいただきますが、お手軽にと言う方はこのプランをご提案します。
ただ、今まで何度もくどく話しましたが、血液検査だけで体のすべてのことがわかったり病気の確定診断がつくわけではないです。まずは血液上の所見を得てみよう、という感じですね。それでも、血液はとても重要な情報をたくさんくれますので「まずは血液検査だけ」というのも悪くはありません。
最後に、健康診断の大きな意味として「健康なときのデータ採取」ということについてお話しします。実はこれがのちのちとても生きてきます。
犬も猫も「個体差」がとてもあり、「そのコの基準」というモノがあります。健康なときに検査をすることでその「そのコの基準」を記録しておくのです。
これは将来いざ病気で検査をした時に比較することができるため、その時の判断にとても生きてきます。情報量がぐんと増えるのですね。
こういう意味でもぜひ若くて健康なうちのデータが欲しいところ。
しかし、健康診断をおススメしても「今はいいかな~、ウチの子元気なんで」
という返答が多いのが現実。まあ元気なことはいいことなのですが、よく考えてみましょう。元気なときにやるのが「健康診断」です。
元気じゃない時=病気の時にやる検査は健康診断ではありません。
ぜひ、若くて元気なうちに一度データを採っておきましょう。ペットドックなど健康診断の相談はいつでもお受けしています。ぜひお気軽にお声掛けください。
それでは。