遅くなってすいません。12月になりました。なんだか一年があっという間、ということを毎年言っている気がします(笑)。年末年始の準備、お済ですか?クリスマス以降は業者もお休みとなることが多いので、常用薬、サプリ、フードなどは年明けの分までご用意ください。年明けは1/4(水)から通常診療の予定です。
年末年始の休診について
年末年始の休診案内です。
<年内最終診療日> 12/29(木)午前中(※午後から休診)
<年末年始休診期間> 12/29(木)午後~1/3(火)
<新年診療開始日> 1/4(水)~通常診療
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。
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年越しの準備はお早めに!
常用薬(心臓病のお薬、てんかんのお薬など)、サプリメント、フードなどの準備はお済でしょうか?
クリスマス以降は業者もお休みが多くなり、入荷や配送に時間がかかります。ぜひ、余裕をもってご準備ください。
また、避妊や去勢、歯科治療などの全身麻酔が必要な治療は12/21(水)が最終受付となります。「今年中に済ませたい」とお考えの方はお早めにご相談ください。
歯周病は「病気」です!(病気なんだから治療が必要)
12月になり、歯周病治療を希望される方が増えています。
「一年の汚れを落としたい」という気持ちでしょうか?いずれにしろ、治療を検討してほしいペットはたくさんいますので、ぜひ皆さんもペットの口の中を覗いてみてください。
さて、過去にも何度かお伝えしてきましたが、当院では、できるかぎり獣医歯科学のガイドラインからはずれないような歯科治療を心がけています。歯の専門でもなければ、特殊な歯科治療は実施していません。標準的な治療です。しかし、一次病院としては、その標準的な内容を正しく実施することがとても大切です。なお「無麻酔歯石除去」なるものは一切提推奨していません。なぜなら、標準的な治療ではないからです(むしろやってはいけない内容です)。
正しい歯科治療には全身麻酔が必須。このあたりのことも含め、歯周病全般についてもう一度まとめておこうかと思い今月のトピックにしました。
以前の記事などですでに同じような内容を解説していますが、初めての方もいると思いますので、ぜひご覧になってみてください。
※代表的な過去記事はコチラからどうぞ
歯周病は「病気」
ある資料では「3歳以上の犬猫の80%は歯周病」と言われています。程度の差はありますが、実際診療をしていると、軽いものを含めればこの80%と言うのもうなずける数字です。
- 歯周「病」ですから、病気です→当たり前
- 病気ですから、治療です→当たり前×2(笑)
- 治療ですから、病院で実施→当たり前×3(しつこくてすいません)
このように、言葉で説明すると至極シンプルなことですが、実際「あなたのペットは歯周病です」とお話ししても、ほとんどの人は治療に前向きではありません。それだけ「歯周病」については病気としての意識が低く、ヒトによっては「ちょっと歯が汚いだけ」「口が臭いだけ」ぐらいにしか考えていないようです。実際は、教科書には「歯周病=最終的には顎骨を溶かし破壊する感染症」と書かれています。つまり歯周病は恐ろしい感染症なのです。
診察の時の身体検査で「だいぶ歯周病が進行してきていますね」と話をしたときに「じゃあハミガキ頑張らなきゃ」という返答も良くあります。これも、歯周病が病気であるという意識の低い証拠。
「私はむし歯だから頑張って歯をみがいている!」という人がいたら「いやいや違うだろ、歯医者さんに行って」と誰もが思うはずです。「むし歯」や「歯周病」がハミガキで治るのであれば歯医者さんは要らないわけで。犬猫もモチロン同様で、病気の状況がハミガキで治ることはありません。ハミガキは「ケア」で治療ではないのです。
くどいようですが、歯周病については「病気」としての意識が低く、ケアと治療の考え方もごちゃごちゃになっている方が多いんですね。
歯周病治療と全身麻酔
ただ、歯周病の治療には「全身麻酔」が必要。どうしてもここに大きなハードルを感じてしまう人が多いです。
- 全身麻酔はコワイ
- 歯ぐらいで全身麻酔なんてかわいそう
- 全身麻酔はお金かかりそう
こんな感じで、治療に取り組めないことが多いのかなと思っています。
古いブログ記事でも書きましたが、正しい歯科治療をするのに全身麻酔は必須。
大きな理由は2つ。
- 全身麻酔下でないと正しい治療ができない
- 全身麻酔下でないと動物がとても危険
つまり、無麻酔での処置は「正しい治療ができないくせに危険!」ということです。
無麻酔歯石除去?
巷では「無麻酔歯石除去」なるものを提案している施設もあるようですが、どの観点から見ても正当化されないことですから「受けようかな?」と考えている方は十分に気を付けてください。中には獣医師資格を持たない者が実施して死亡事故となったケースもあります(過去記事に詳しく記載)。
そして、最も重要なのは「歯石だけ取って満足してどーすんの?」ということ。獣医歯科学的にはこの観点はメチャクチャ重要です。
「歯石を取ればそれでOKなんじゃないの?」と短絡的に信じているヒトがインドの人口を超えていますが、これは大きな間違いです。
歯周病治療の作業の中の一つに、確かに「歯石除去」は含まれますが、歯石除去は「手段」であり「目的」ではありません(→とても重要)。
歯周病治療の本質、目的は「歯周ポケットにアプローチすること」です。そのためには「歯石はジャマ」なので除去するわけです。もちろん歯石は、あるよりも無い方が今後の歯周病の進行は遅くなるので、取ること自体に意味がないわけではありません。が、歯石さえ取れば歯周病の治療になると思っている方は間違いだと認識してください。
「歯石だけ取ればOK」という誤解が多いので「歯石ぐらい無麻酔で取ってよ」とか「歯石はカットの時にトリマーさんが取ってくれているから大丈夫」(※実際はトリマーが処置するのはアウト)などと言う方がたくさんいるのだと思います。
確かにおとなしい動物なら無麻酔でペンチや鉗子(つまむ器具です)を使ってカリカリと歯石を除去することは可能です、が、これは「見た目が少しきれいに見えるようになっただけ」、つまりただの美容処置であって歯周病の治療にはなっていません。中途半端に歯石だけを取ってあげると飼主さんは「ああ、これでいいんだな。治療してもらった」と勘違いすることになります。病院は、美容ではなく治療を提供する場所であり、このような誤解は避けなければなりません。
つまり、無麻酔歯石除去を提案するヒトや病院は「治療の提案はしていない」ということです。どうかご注意ください。何度も言いますが「歯石を取っただけ」では治療にはなりません。
実際に、遠方の他の病院で定期的(一年に何度も!)に無麻酔歯石除去を受けていた患者さんを知っていますが、結局歯を支える支持組織はボロボロになって最終的には抜歯となりました。当たり前です。治療をしているわけではないので、歯周病は進行していますからね。結局、たくさんの歯を抜くことになるなら何のために遠い病院まで頑張って通ったのでしょうか?
歯周病の末路
さて、歯周病を放置して高齢になるとどうなるでしょうか?
歯肉、歯槽骨、歯根膜など歯を支える組織はボロボロになっています。歯の根の部分では膿が溜まり始め、やがて眼の下や顎の皮膚を突き破り吹き出てきます。さすがに痛くなるので動物も苦しみ始めます。
- 写真左:第四前臼歯の根尖膿瘍による蓄膿が皮膚から流出。
- 写真右:犬歯の根尖膿瘍による蓄膿が歯の脇から流出。
そして、この状況になって「今から何とかなりませんか?」という患者さんが後を絶ちません。
ほとんどの方が、それまで無治療で放置した方です。
10年15年と放置され、ボロボロになってしまった組織は修復不可能なので、このケースでの治療は「ほとんどすべての歯を抜くこと」になります。もちろん全身麻酔下で、骨を削り歯肉を形成する「口腔外科手術」が必要となります。みなさんが想像しているような、ハミガキや歯石取りとはかけ離れた外科手術です。しかもペットは高齢、すでに持病も出てきたりなど、若いころに比べると治療のハードルはとても高くなってしまいます。
- 写真:歯肉粘膜フラップ縫合。すべての歯を抜歯して歯肉形成。
そして多くの方が「若いうちから治療をしておけばよかった」と後悔することになるのです。この話は、誇張しているわけではなく、本当によくある話。動物病院業界ではあるあるの話です。
冒頭にも述べましたが、歯周病が病気であるという意識が低すぎて、長期に引っ張ってしまう方が多いのでこうなってしまうわけです。全ての病気や治療において同じですが、引っ張って引っ張って最終段階でようやく治療、と言うのは最悪の選択。「どうせやるなら早いうち」なんですね。一般的に病気と言うのは後になればなるほど、治療法が難しく、痛みを伴いやすく、完治しずらく、そしてコストもかかります。
歯周病の場合、初期~中期は具合が悪くなるようなことはありません。つまり、食欲や元気はフツー。歯の汚さと口臭を我慢すれば日常生活で困ること感じないでしょう。だから、病気の状態で放置されやすいと言えます。
歯については「見た目が汚い=ある程度歯石が付いている」という状態はすでに歯周病だと思ってください。何度もくどく言いますが「病気」なんです!
ペット本人はどう思っているのでしょう?「若いウチに一度や二度ぐらい治療してくれよ」って思っているかもしれませんね(笑)。ペットの声を聴けるのはご家族だけ。ぜひ、できるだけ若いうちからの治療を検討してみてください。