こんにちは。院長です。
さて、フィラリア予防。今年もその予防の開始時期が近づいてきました。そこで、毎年くどいようですが、フィラリア予防についてのおさらいです。
- 予防の開始は? → この地域では、5月下旬か6月上旬ごろからスタートします。
- 予防の終了は? → この地域では、11月中旬以降に最後の予防をします。
さて、「フィラリア予防」は有名ですし、かなりの患者さんが予防をしています。
ですが、この予防期間についての質問
-
いつから予防ですか?
-
いつまで予防ですか?
については、毎年必ずたくさんのご質問をお受けしますのでちょっと解説をしておきましょう。
【よくある質問 ①】 ほかの病院さんで4月から予防したほうがいいと言われました・・・。5月からで大丈夫?
予防のスタート時期についての質問です。動物病院によって予防推奨時期が違ったりするからややこしいのでしょう。。。さて、そもそもどのように予防期間を設定しているのでしょうか??
- 獣医師の個人的な感覚で設定?
- 病院の経営方針で設定?
とか、そういう施設もあるのかもしれませんが、、、当院では違います。
はとりの動物病院では、「HDU」という概念に基づいて決定しています。すごくカンタンに説明すると、過去の地域ごとの気候データから計算上でフィラリア感染が成立する期間を推定するんですね。
実は、わたし自身が好き勝手に決めているわけではないのです!(笑)。
このHDUを用いた方法で感染期間を推定→予防期間を決定します。
すると、下の図がわかりやすいので見ていただきたいのですが、千葉の推定感染開始日は5月上旬頃ですね。
「じゃあ5月上旬から予防スタート???」
「違います。」
こっからが大事なポイントです。
実は、フィラリア予防薬は「予防薬」と慣例的に呼んでいますが、実際は「駆虫薬」なんですね。
体内に侵入したフィラリアの幼虫が、まだまだ弱いうちにやっつけよう、というお薬なのです。
つまり、ちょっと回りくどく言いますと、フィラリアの予防薬というのは、
体内に侵入したフィラリアの幼虫を弱いうちに「駆虫」し、フィラリアが成虫になってしまうのを「予防」するお薬といえます。
ですから、感染の開始前にお薬を使っても、そもそも犬の体内にフィラリア幼虫がいないのですから、フィラリア予防の意味はないのです。
具体的には、感染開始から1か月後ぐらいが初回投薬の目安となります。
ここはとっても重要なポイントなのですが、一般の方にはどうしても理解が得られにくいのです。眼に見えない虫を相手にしていますし、予防薬という呼び方も誤解を生じる理由なのかと思います。このポイントは、「いつまで予防??」にもつながるので是非知っておいていただくと良いと思います。
さて、まとめますと、
- 基本的に関東近辺で生活しており
- お出かけもその範囲であり
- フィラリアだけをキチンと予防したい
という事であれば、
当院の推奨する、5月末~6月初めから予防開始でOKです。4月からの予防は必要ありません。
ただし!
- 想定外の異常気象で3月から真夏日がバンバン出ているとか。←まずないですね。
- 春休みやGWの沖縄旅行に犬を連れていくとか。←これはあり得るかもですね。
- お住まい周囲の環境だけ、なぜだか特別気温が高いとか。←たぶんそういう事はないと思いますが(笑)。
- 他の寄生虫もまとめて定期的に予防したいとか。←多くのフィラリア予防薬は他の線虫類を予防駆除できます。
そういう特殊な事情があれば、3月や4月の予防も必要になる可能性がありますし、あるいは一年間通しての予防も方法としてはアリなのです。
結論です。
問答無用で「4月から予防が必要~~~」というのは、理論的なフィラリア予防期間の考え方とは異なる。
というのが当院の見解です。
【よくある質問 ②】 寒いし蚊なんて見ない、最後のお薬が11月末とか12月頭とか、ボッタクリじゃないの??
「いつまで予防したらいいですか?」という質問ですね。ボッタクリは脚色(笑)ですが、たま~に、そう思っているんだろうなーって顔色の方はいらっしゃいます(笑)
この、最後の一回の予防についても理解の得られにくいポイントです。なぜなら、質問の通りで「寒い」「蚊がいない」からです。しかし!、ここまで、しっかりと読んでいただいた方にはわかっていただけると思います!
さて、話が少し戻りますが、フィラリア予防薬って・・・、どんなお薬でしたっけ??
- 「え、予防薬を飲むと、その後しばらくは蚊に刺されても大丈夫なんでしょ??」←違いましたよね!!
- 「いやいや、予防薬を飲んでいると、蚊に刺されないんでしょ??」←全然違いますよ(そんな薬あれば人間も欲しい💦)
- 「体内に侵入したフィラリア幼虫を、成虫になってしまう前に駆虫するお薬でしょ??」←その通りです!
そうですね!
フィラリア予防薬は、体内に侵入したフィラリア幼虫の駆虫薬でした。
フィラリアの幼虫は、犬の体内に侵入後2~3か月すると、単純なフィラリア予防薬では倒せなくなるとされています。ですから、そうなる前に、1か月ごとに定期的に投薬することで、幼虫をまとめてやっつけるワケです。
この大事なポイントを抑えてもらえれば、「いつまで予防するの??」の答えはおのずと見えてきます。
では、先ほどの図をもう一度。
フィラリア予防薬は、体内のフィラリア幼虫を駆虫するお薬ですから、
「最後に予防するのはフィラリアの感染が終わってから」でないと、完全に予防したことにはなりませんよね?
つまり、感染終了後・・・上の図では感染終了は11月中旬ごろとなっています。つまりこれよりも「あと」に最後の投薬が必要というわけです。当たり前ですが、感染は終わっていますので、蚊も飛んでいませんし、寒いです。でも、この時期に最後の身体のお掃除が必要なわけですね(ちょっと難しい話ですが、厳密には感染直後の幼虫にはお薬が効かないので、感染終了後しばらくしてから投薬する必要があります)。
少し難しかったかもしれませんが、わかりますでしょうか?
結局、「予防薬の投薬で、何をやっているのか?」がわかると、答えは全部出てくるんですね。
結論です。
最終投薬は、感染終了後、つまり11月下旬や12月上旬ごろ、寒くて蚊のいない時期にやらないと意味がありません。
さて、最後に一言・・・。
毎年、必ずと言っていいほどいらっしゃるのですが、、、冬の最後の予防薬をやらず、お薬を一個取っておき、翌春の4月に飲ませる方がいます。
ここまで読んでいただいた方にはお分かりだと思いますが、これは、フィラリアの予防としては大アウトです。
本人は良かれと思ってやっているのでしょうが、
- フィラリア感染のリスクがある時に予防しないで・・・
- フィラリア感染のリスクがない時に予防している・・・
フィラリア予防としては、全く意味のない行為です。
私たちは、何もウソをついて儲けようなどとしているわけではありません。どうせやるなら、理論的に、確実に、そして無駄なく予防をしてほしいと思ってお話しをしています。
まあ、フィラリア予防は「任意の予防」ですから、やるやらないは構いませんが、私たちもプロですから、「いつからですか?」とか「いつまでですか?」というご質問に対しては、正しいお答えをする義務がありますので。
すいません、長くなりましたが最後まで読んでいただきありがとうございます。それでは、今年もフィラリア予防、頑張りましょうね!
P.S.
当院では、フィラリア予防薬は、原則フィラリア抗原検査を受けていただいてからの処方となっています。
検査を受けていただいた方には、素敵なプレゼントがありますのでお楽しみに!!
また、健康診断を受けていただくと、フィラリア検査料金が無料となりますキャンペーンも実施中。詳しくはスタッフまでお気軽にどうぞ♬