こんにちは。院長です。久々になってしまいましたがセミナー参加レポ。
今回のテーマは「スキンケア」です。
講師は、スーパー外科医の中島尚志先生です。中島先生は、外科手術はもちろん超一流ですが、以前からスキンケアの分野にも非常に精通されています。実際にスキンケア用のアイテムも開発しており、そのアイテムと理論的な手法でたくさんの皮膚病の犬も救っているのです。
→実は当院はN’s drive愛用の病院として紹介されています(笑)
10年以上前になると思いますが、中島先生のスキンケア理論と手法を知ったときは衝撃的だったのを覚えています。それから私も実践するようになって、いかに中島先生の提案するスキンケアが優れているかを実際に経験し、現在は皮膚疾患の重要な治療オプションとして、スキンケアを強く推奨しております。スキンケアについては↓過去ブログ記事↓などもご覧ください
さて、今回のセミナーですが、アトピー犬で多く見られる皮膚バリア異常とそれに対する保湿と抗菌戦略を中心に、最新の知見を交えてのレクチャーを受けてきましたのでポイントをちょっとお伝えしますね。難しいかもしれませんが興味のある方はご覧ください。なるべくわかりやすい表現で書いていきます。
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皮膚バリアの破綻とバリアの回復
アトピーをはじめ、ほぼすべての皮膚疾患で皮膚のバリアがおかしくなっています。ヒトでは最近「皮膚バリアの異常→アトピー性皮膚炎の発症」ということが分かったようです。アトピー体質だからバリアが悪くなるのではないのですね!。皮膚バリアが破綻しているヒトでアトピーが発症し、アトピー症状(皮膚炎)が起こるとさらに皮膚バリアが構築されにくくなるため、アトピーはどんどん進行していくようです。犬の皮膚でもほぼ同様の事が起きてると考えられます。つまり「アトピーの治療は皮膚バリアの回復」というのが本質。抗生物質でもステロイドでもありません。やるべきことは「皮膚バリアの回復=保湿」なのです。
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皮膚に住む細菌たちと抗菌戦略
ヒトの皮膚には2000~3000種類もの細菌が住んでいるそうです。これらの菌はお互いに数のバランスをとり、特定の細菌だけが増殖したりせず仲良く暮らしているのですね。これを、正常細菌叢と言います。アトピーの皮膚ではこの細菌のバランスが大きく崩れ、ある特定の細菌(=ブドウ球菌)が増えている状態になっているようです。この状況は過去には「infection=感染」とされていましたが、現在は「dysbiosis=細菌叢のバランスが崩れた状態(正常細菌叢が崩れた状態)」と考えるようになり、抗菌戦略を再考するべき時代となりました。なお、特定の細菌が増えた状態と皮膚炎の強さには相関があるそうです。逆に言えば、皮膚の細菌バランスを整えられれば・・・ということになります。
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アトピーを時間軸で考える
アトピーに限らないのですが、すべての病気は「四次元的」に考える必要があります。つまり、時間とともにその病態は変化するという事。身も蓋もありませんが、根本的にアトピーは治る病気ではなく、時間とともに必ず進行していき、再発を繰り返しながら末期像へと移行します。治療をすると一時的に良くなりますが、これは「眼で見て病変がわからない」というだけで、もちろんアトピーが治っているわけではなく、この間も進行を続けているのです。この考え方は、一般の方にはどうしても理解が難しいところなのですが、非常に重要なポイントです。治っていない(どころか進行している)のですから、何らかの治療(ケア)を続ける必要があります。その手法が「スキンケア」なのです!
「え~、良くなってんだからもういいじゃん。そんなにいつまでも手間もコストもかけられないし・・・」というのがよくある訴え。しかし、何もしないとほとんどの症例で、皮膚炎の再燃をくり返します。ですから、
「またなっちゃいました・・・」というのもよくある訴え。残念ながら、一発で治すような魔法の薬はありません。理論的なスキンケアを根気よく実践することが、慢性進行性の皮膚病への重要な対策の一つなのです。
さて、ちょっと難しい話になってしまいました(^^;)
ここからは、スキンケアの具体的なお話しにしましょう。
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シャンプー(洗浄)は?
シャンプー(洗浄)の目的は「皮膚に付着している汚れの除去」です。それ以上もそれ以下もありません。汚れが落ちればいいのです。何を当たり前のこと言ってんだ?とお叱りを受けそうですが、実は犬の体表汚れをキチンと分析し、それに対応すべく作られた洗浄剤はほとんど存在しません!「犬用」って書いてあっても犬の汚れを考えて作ってはいないのです!?、、、コレがこの業界の怖いところ・・・(あ、殺菌シャンプー(ノル○サンとかマ△セブ)ってのはスキンケアには有害ですので気を付けましょう💦)。
しかしご安心を、当院では犬の汚れに対応している(当たり前なんですけどね・・・)洗浄方法を提案しています。特に脂漏症などのワンちゃんの場合、ワックス状の汚れが落ちにくいのですが、それに使用するのが「N’s driveスキンクリーニングオイル」(化粧落としのクレンジングと同じ理論)。皮膚にとって有害な「がんこな脂汚れ」をとても良く落としてくれます。クリーニングオイルと当院推奨の安全性の高いシャンプー(洗浄剤)を組み合わせて洗浄します(ブログ記事も参考に♬)。
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バリアの回復=保湿は?
さて、洗浄して汚れをマイナスした皮膚には、足りないモノ、皮膚バリアの成分をプラスしてあげましょう!つまり保湿処置をします。保湿剤は皮膚に残すものですから、すべてのアイテムの中でも特に安全性が求められます。N’s driveスキンバリアとN’s driveスポットバリアはとても優秀な保湿剤です。上述の通り、アトピーの治療の本質はバリアの回復ですから、保湿剤は絶対にハズすことのできないアイテムとなります。そして重要なのは、無症状期(眼で見て異常がない時期)においても継続して保湿処置をすること。定期的な保湿処置で皮膚のバリアを強化し、再発再燃を予防するのです。
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抗菌戦略は?
抗生物質の乱用は世界的な問題となっており、極力使用を控えることが人医療では当然となっています。犬の皮膚病でも抗生物質を使うケースは多いのですが、上述のように、アトピーの皮膚では「感染」ではなく「細菌バランスの乱れ」が起きています。細菌感染症には抗生物質を使わなくてはいけませんが、感染でないのであれば・・・?。そこで、細菌のバランスを整えるべく、静菌スキンケア製品である「リバイオエピ」が登場します。細菌バランスを整えることで皮膚炎を軽くしたり予防したりすることが可能です。この製品は有効性はモチロン、安全性もとても高く、動物だけでなく人にも優しい設計でいつものケアとして毎日どんどん使ってもらって構いません。保湿と同様、病変が出やすい部位などでは、無症状期にも定期的な処置を行うことがとてもお勧めです。また、このアイテムは抗生物質とは違い、耐性菌を作らないということも非常に重要なポイントです。
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さいごに
このように一言で「スキンケア」と言っても、様々な戦略があるのですね。そして、その戦略や理論は日々進歩しています。残念ながら、アトピーの治療目標は完治、ではありませんが、今よりも軽くする、そうですね、今の半分ぐらいの症状まで持って行ける可能性は十分あります。どうしても根気のいる長い戦いになってしまいますが、理論的で安全なスキンケアを実践し、アトピーのワンちゃんが少しでも楽になれるようがんばりたいと思います。興味があればぜひご相談くださいm(__)m。