【第1話】病院の猫がリンパ腫になりました。


第1話 病気を疑う瞬間とは・・・?

院長です。

前回、病院の看板ねこ「なこ」がリンパ腫(悪性)になったことをご報告しました(→【第0話 病院の猫がリンパ腫になりました】)。現在はがん治療を始めて約2週間。順調に経過しています。

さて、この病気がどうやってみつかったのか?

第1話はまず、「病気を疑う」ということをお話しします。シンプルなようですが奥もある話です。

まず、病気を疑うには「症状」や「兆候」というものを捉えなくてはなりません。動物の場合は自覚症状を直接しゃべって訴えられないので、ご家族が症状を捉える必要がありますね。

  • ゴハンを食べない
  • 元気がない
  • 吐いている

などなど、これらが「症状」。この症状をご家族が捉えられるかどうか?これが最初の最初ですね。なんかおかしいなと思ったら、動物病院に来ることになります。

そして。

次に「兆候」をとらえます。「兆候」は主にプロ目線から捉える体の変化です。獣医師による問診や身体検査などから、一般の方には判断しにくい変化=兆候を捉えていくことになります。

簡単な例をあげてみましょう。

  • 飼主さん「なんとなく後ろ足の歩き方がおかしい気がする」
  • 獣医師「左右で筋肉量が違うな、左の方が細いからおそらく左脚に何か問題があるだろう」

飼主さんが捉えているのが「症状」、獣医師が捉えているのが「兆候」、こんな感じです。

さて「なこ」の場合はどうだったか?

まず初めに「なこ」のタイプを説明をしておきましょう!

「なこ」はいつも食い意地が張っていて(笑)、基本的に食べないということが無い猫です。ゴハンを出すとほとんどはすぐに完食。今まで食欲不振とは無縁でした。また、異物をよく食べてしまう猫でもあり💦そのせいか吐くときは連日吐いたりします。ただ、吐いてもすぐにケロッとして、またがつがつとゴハンをたべます。そういうタイプの猫です。

そんな「なこ」に

  • ゴハンを完食しない(半分ぐらい残すことも)
  • 吐く回数が多い
  • いつもより元気がない

というような「症状」がみられていました。

ただ、この段階では私も「またいつもみたいに何かヘンなもんでも食べたんじゃないか?」ぐらいにしか思っていませんでした。

しかし、上記症状が少し長めだったのと、ここからが大事なのですが、明らかに「体重の減少傾向」がみられてきました。

一度や二度の測定では判断できませんが、「測るたびに体重が減少している場合」は何か病的なサインだと思ってください。「兆候」の一つといえます。

日常の診察でも「食べない」「吐いている」などは良くある訴え(症状)ですが、ほとんどのケースは一過性の胃腸障害や胃腸炎ですぐによくなります。こういうケースの体重減少は、あっても一時的です。

しかし同様の症状でも、何度か診察する中で「持続的に体重が減少している」場合は、獣医師目線的に「あれ、なんかおかしいな?」「ちょっと検査したほうがよさそうだな」と、こういう思考になっていきます。体重減少はそれほど重要です。

「なこ」の場合も、過去には連日吐いたりしても体重が持続的に減ることはありませんでした。むしろ増えて困っていました💦。ところが、今回初めて体重が減り続ける「なこ」をみて、「これは検査したほうがいいな」というカンが働きます。まあ、それでも何も見つからないこともあるのですが、それならそれでOK。でも何かあるなら早めに見つけたい、じゃあ調べてみよう。私たち獣医師の頭の中ではこのように考えが進んでいるのです。

グダグダと書いてしまいましたがまとめると

  • 症状を聞いて
  • 兆候を捉えて
  • 病気を疑うなら検査に進む

こういう感じです。

当たり前といえば当たり前。

ただ、飼主さん目線では「兆候」の部分が理解しづらいことも多々あります。

私たち獣医師はプロ目線で病気を疑う「兆候」を捉えていて、精密検査に進んだ方がいいなと思っていも、一般の方は「本当にそうなの?お金儲けじゃないの?」と思うこともあるようです。とくに、食欲や元気がそこそこある場合は理解してもらいづらいです(もちろん食欲や元気が落ちにくい病気もあるわけですね)。

精査をお勧めしても、同意を得られないときは一時的な処置(対症療法というやつですね)をしますが、何かの持続的な病気の場合はこれだけでは不十分な治療となります。そして、その後にどのみち精査をするのであれば(結果論かもしれませんが)最初からやればよかった。ということにもなります。時間を争う病気ならなおのこと。私たちは(当たり前ですが)良かれと思って精査を提案しています。できれば、提案した時には同意してほしいところではあります。

ちょっと話がそれますが、病気には大きく2つあると思っていいいと思います。

一つは、事故的なもの、一時的なもの、体調が整えばすぐによくなる、そういうたぐいのものです。私たち人間でもよくあることでしょう。

もう一つは、いわゆる「大きな病気」というやつ。持続的なもの、長期もしくはほぼ永久的に治療やケアが必要なもの。持病や基礎疾患という言い方のものはこちら。

獣医師は、何らかの兆候を捉えてもし後者を疑った場合は、精密検査を提案することになります。何かあるなら早く見つけるに越したことはないのですから。私たちが、精密検査を進めるにはそれなりの根拠や理由があるのですね。

そして、「なこ」も一通りの検査=精密検査を行うことになりました。

(つづく)→【第2話 病院の猫がリンパ腫になりました。~精密検査って何?~】