セミナー参加レポ ~十字靭帯病~


こんにちは、院長です。

さて、久々の学術セミナー参加レポートです。お勉強、サボっていたわけではありませんよ(^^;)

 

今回のテーマは「前十字靭帯病」。

講師は手術の依頼を受けて全国を飛び回るスーパー外科医の中島尚志先生。当院も何度もお世話になっています。

 

「前十字靭帯病」は当院でもよく診察する「整形外科」領域の病気です。今回はこの病気についての外科手術の話はもちろん、原因論や内科的な考えかたについてもレクチャーを受けて知識をアップデートしてきました。外科手術の細かい話は一般の方には面白くないので、今回はこの病気の“根っこ“のところを皆様にお伝えしたいと思います。興味のある方は最後までお付き合いください。

 

まず、「前十字靭帯」とは?

 

膝(ひざ)関節内で大腿骨と下腿骨(モモとスネの骨)をつないでいるとても重要な靭帯です。非常に丈夫な靭帯で、切ろうと思ってもちょっとやそっとの力では切れません。

この靭帯のおかげで膝関節は体重を支えたり複雑な動きに耐えることができます。

 

で、今回のテーマ、「前十字靭帯病」ですが・・・

 

いきなりですが、「前十字靭帯病」の最終形は「前十字靭帯の断裂」という状態になります。つまり靭帯が切れてしまうのです。これは犬では非常に一般的な病態で当院でもよく診察します。前十字靭帯が断裂してしまった場合は、何らかの外科手術が必要なことが多く、当院でも「関節外法」という外科的方法で対応しています(※他にも様々な手術法がありますが一般病院で最も実施しやすい手術が関節外法です)。

※写真は専用の縫合糸とそれを用いた関節外法のモデル

 

 

さて、「靭帯の断裂」なんて聞くと多くの方が

 

「あ~なんだ、じゃあこの病気は『ケガ(外傷)』が原因なんですねー?」

と思うのではないでしょうか?(←ちがいます!)

 

確かに、人間の場合はスポーツ中の外傷などで前十字靭帯を断裂することが多いそうです。

 

しかし、犬の場合はそうではありません。

つまり、ケガ(外傷)が原因ではないという事です。

 

ケガじゃないとしたら、なぜそんな丈夫な靭帯が切れちゃうの!?と思いますよね。

 

実は、犬の場合は、この前十字靭帯が「時間をかけてだんだんと弱くなっていく」ことがほとんどなのです。で、だいぶ弱ったところで、ちょっとした一押し!があると、「プツン」といってしまいます。靭帯が完全に切れてしまうのです。ですから、この文章中の病名も、あえて前十字靭帯「病」と表現しています。「断裂」と言ってしまうと、ケガや外傷で切れるようなイメージになりがちです。

 

犬で前十字靭帯がだんだんと弱くなる原因は様々ですが、中でも体重と加齢が重要です。

 

特に体重は重要で、その証拠にこの病気は大型犬や肥満犬に多発します。

大型犬の場合は肥満でなくても多くみられます。

 

実は関節というのは時間ともに必ず変性、老化がおこる場所なのです。マイナス方向にしか進みません。すべての動物で平等にだんだんと悪く、そして弱くなります。私たちも一緒です。

 

大型犬や肥満犬では通常の加齢によるマイナスに加え、体重という強力な負荷が常にかかっていますので、変性や悪化がとても早くなります。大型犬や肥満犬では2~3歳でもすでに関節がだいぶ悪くなっていることも珍しくありません。

 

このような関節の変化を「変形性関節症」などと呼びます。

そして、変形性関節症が進行して起こるのが「前十字靭帯病」であり、その最終形が「前十字靭帯の断裂」なのです。

ここは、とても重要なポイントです!

 

そもそも原因になっている病態は「変形性関節症」なのです。

ですから、断裂した前十字靭帯に対しては、確かに何らかの外科的対応が必要なことがほとんどなのですが、外科だけをしてもダメなんですね。そもそもの原因である、変形性関節症をキチンとケアしてあげないと治療をしていることにはならないのです。

 

また、変形性関節症に陥っている理由もよく考えなくてはいけません。例えば肥満が理由ならやせないとダメ。どんなに上手な手術をしても、やせないと絶対によくならないです💦。また、大型犬種では遺伝や成長期の問題などから、若くして関節の適合が悪く変形性関節症に陥っている事もあります。

 

さて、ではここで「逆」に考えてみましょう。

 

つまり、変形性関節症を最小限にしてあげれば、前十字靭帯の断裂という最終形にならずにすむかもしれないということです。

 

では、変形性関節症を最小限にするには?

重要なのは次の2点。

 

①明らかに肥満の場合は適正体重まで減量すること。

実例をご紹介します。先日、前十字靭帯が断裂し手術を実施したワンちゃんがいました。適正体重をかなりオーバーしている高齢のワンちゃんです。手術したほうの脚は少しずつよくなっていたのですが、間もなく今度は逆脚の前十字靭帯が断裂・・・(-_-;)。

肥満は本当に良いことが一つもありません。犬は人間のように、みずからオヤツを買ってきたり袋を開けたりはしませんよね?肥満になるのは、人間側に理由があることがほとんどです。関節のトラブルだけでなく、肥満の患者さんでは様々な合併症が起きてしまいます💦

本気で減量に取り組みたい方は、減量プログラムを作るなど、アドバイスをいたしますので当院までぜひご相談ください。

 

②早く発見し早く介入(治療やケア)をすること

「早く発見する」、これが簡単そうで実は難しいんです。犬は言葉を発しないので、微妙な痛みや違和感を訴えることは苦手です。「変形性関節症」は徐々に進行するので、この微妙な症状をご家族が正しく捉えるのはなかなか困難。ですので、早く発見するには、身体検査や健康診断が重要になります。私たち獣医師は、筋肉量、左右筋肉の対称性、関節の腫れ、関節の可動域、歩様、座り方などを確認し、関節のトラブルを疑うことができます。状況によってはX線検査も行い主要な関節をチェックしておくこともおすすめです。X線検査では100%の病変を拾えませんが、客観的なデータを残しておくという意味で重要です。実際はX線でわかるレベルの変形性関節症はそこそこ進行している状態といえます。

身体検査は随時行っていますし、健康診断にX線検査を組み込むなどもいいかもしれません。少しでも気になれば早めにご相談いただければと思います。

 

以上、

なんだか、まとまりなくダラダラと長くなってしまいました(^^;)

病気の概要はわかっていただけたでしょうか?

 

みなさん、整形外科というと、「骨と骨を金属でつないで~~」なんていう「外科手術」のイメージが強いと思います。

でも実際は、今までお話ししたように、変形性関節症や十字靭帯病は、体重管理や早期発見・早期介入など、「内科的な治療やケア」もとても重要ですね。いわば、「整形内科」と言う感じです。

 

しかし、前十字靭帯が断裂までいってしまうと、内科的対応だけでなく外科的対応も必要となります。当院でも、外科については、先に述べた関節外法については常に準備をしています(※なお詳しくは触れませんでしたが、前十字靭帯断裂→半月板損傷まで起こってしまうと機能回復が著しく悪くなります)。

 

でもでも、やはり前十字靭帯の断裂までならないようなケアをしたいですよね?

 

だって、、、みなさん、手術・・・、イヤですよね?(笑)。

 

ですから、まずは変形性関節症の早期発見と介入のために、気軽に身体検査にご来院ください。

あ、モチロン体重もチェックしますよ~(笑)

お待ちしていますm(__)m

 

※もう一つのよくある整形外科疾患「股関節関節症と大腿骨頭切除」についてはコチラをご覧ください!

 

院長